この記事は2024年4月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 資材事業本部
肥料農薬部
農薬課 課長補佐 髙井 祐輔(左)
技術普及課 菅野 拓朗(中)
肥料課 課長補佐 水田 卓志(右)
防除の委託を望む声に応え、ホクレンではドローンによる農薬散布を請け負っています。農薬散布、雑草センシング、施肥まで広がるドローンの活用について肥料農薬部に聞きました。
作業委託で適期防除を
深刻化する労働力不足を背景に、ドローンの活用が広がっています。
ホクレンでも労働力不足や現場の課題解決に向け、2021年から農薬の請負散布を実施。
昨年は21JAからの依頼を受け、連携する有限会社レイブプロジェクトの熟練者が操縦し、約1,100haでドローンによる防除を行いました。
ドローンは小型で運搬しやすいだけではなく、防除効果は無人ヘリと同等で、作業性は小回りが利くため、変形地や傾斜地への散布にも向いています。
要望に応じて飛行履歴を提供することもできます。ドローンに適した農薬の新規登録も増えており、2019年3月からの4年間で登録数は倍近くの1212種まで増加しました(図1)。
施肥や牧草管理でも活躍
ドローンは牧草管理にも活用されています。「エゾノギシギシ検知サービス」ではNTTコミュニケーションズ株式会社と連携し、牧草地をドローンで撮影。AIによる画像解析で雑草の位置を特定します。
昨年は2JAがこれを利用し約40haの草地で、雑草であるエゾノギシギシのセンシングを行いました。今後、センシングデータに基づくピンポイント防除に向け、試験を重ねていきます。
また、空知や上川ではドローンによる施肥試験にも取り組んでいます。ドローンを個人所有する水稲生産者が増えていることもあって、直播水稲の追肥を中心に活用が期待されています。
ほかにも直播水稲の播種、作物の生育ステージの確認、融雪材の散布、有害鳥獣の監視など、ドローンの活用が見込まれるシーンはまだまだ多彩。あちこちでドローンが飛び交う未来もそう遠くなさそうです。
ドローンを活用するQ&A
ドローンの活用に関する基本的な疑問についてお聞きしました
Q.ドローンによる農薬散布の利点は?
A.地上防除が難しい場面でも対応可能
スプレーヤーによる地上防除は10a当たり100ℓが基準ですが、空中散布は0.8〜3.2ℓと少ない水量で散布します。ホクレンの請け負い散布では、30ℓタンクを搭載できるDJI社のAgrasT30を主力機種として使用していますが、無人ヘリと同等以上の作業効率を確認しています。飼料用とうもろこしやスイートコーンなど、背丈が高くスプレーヤーで防除しづらい作物の防除にもドローンが威力を発揮します。
Q.どんな防除に利用されていますか?
A.畑作分野にも活用が広がっています
水稲のいもち病や斑点米カメムシ、秋播き小麦の雪腐病を中心に、飼料用とうもろこしのすす紋病、水稲の除草剤、大豆のマメシンクイガ、かぼちゃのうどんこ病など、幅広く防除できます。無人航空機による農薬散布の登録を受けた薬剤なら、どんな剤でも使用可能。規模拡大で適期防除が困難な場合、防除組合のヘリの更新が近い場合など、お気軽にご相談ください。
Q.施肥もドローンでできますか?
A.問題なく散布できることを試験で確認
水稲の全層施肥にはブロードキャスターが適していますが、田んぼに水が入ってからの追肥は簡単ではありません。ドローンで空中散布ができれば省力化につながります。ホクレンではDJI社のAgrasT20で「空散3019(化成肥料)」「BM30」「尿素(大粒)」の試験を行い、いずれも問題なく散布できることを確認しました。