稲を守りながら雑草だけを選んで枯らす水稲除草剤。効果を最大限に引き出す上手な使い方について、ホクサン株式会社の若木さんに教えてもらいました。
この記事は2021年12月1日に掲載された情報となります。
ホクサン株式会社
農薬科学研究所
若木 修さん
水稲除草剤を選ぶポイント:効果的に除草するには、雑草の種類を正しく把握しなくてはなりません。春の耕起のあと、表層の土をバケツに入れて代かきするように混ぜ、ハウスの中に置き、生えてくる草の種類を確かめて効果的な薬を選ぶのがおすすめです。
Q 雑草にだけ効く仕組みは?
例えば、稲とノビエは同じイネ科の植物ですが、薬を吸収し代謝、分解するスピードに違いがあります。こうした植物のさまざまな差異を利用してつくられたのが「選択性除草剤」。ノビエは薬の代謝が追いつかずに枯れますが、稲に対する影響は少ないです。
Q 水稲除草剤にはどんな種類があるの?
水稲除草剤は、散布直後に拡散するものとしないもの、大きく二つあります。
拡散型は水田に入れると広がっていく薬で、フロアブル(液体)、豆粒、FG剤(水に浮く顆粒剤)、ジャンボ剤(水に溶けるフィルムにFG剤を詰めたもの)など、さまざまな剤型があります。水口に薬をセットし、水の勢いで圃場に広げることが可能なものもあります。
直後に拡散しないのは粒剤で、土に落ちた後、拡散します。移植機に施薬装置をつけて移植と同時に薬を落としたり、ドローンやヘリで空中から散布するなどします。同じ薬を何度も使うと同じ草種が残りがちなので、薬のローテーションも大切です。
Q 気をつけなくてはならない雑草は?
北海道で気をつけたい雑草は次の4種です。ノビエは生育のスピードが速いので、防除はノビエの葉齢を目安に行うのが基本です。
❶ノビエ
ノビエはイネ科の植物なので、ノビエだけ枯らすのはなかなか困難です。
生育が早いのが特徴で、数日で葉の枚数が増え、薬が効きにくくなってしまいます。
❷ミズアオイ
北海道特有の植物です。水田ではよく見られます。
薬に対する抵抗性が確認された草種で、取り残すと収穫時にコンバインにからまります。
❸イヌホタルイ
増殖率が高い雑草です。
イヌホタルイに効果が高い有効成分は限られており、多発すると収量減を引き起こしたり、
収穫作業に支障をきたすといったことがあります。
❹オモダカ
主にイモで増える雑草です。
水田の地中深くから芽を出すので薬の処理層で枯らしきれなかったり、有効成分が切れたころに出てきたりします。
Q 除草剤の効果を最大限に引き出すには?
除草剤は使い方を間違うと稲の生育が遅れるなど薬害が生じる場合があります。健苗の育成、適正な深度での移植に加えて、次の3点に気をつけましょう。
1.容器のラベルを注意深く読みましょう
ラベルには適用雑草や使用方法のほかに、効果や薬害についての注意事項が書かれています。薬害を防ぎ、効果を高めるポイントが列記されているので意識して読むようにしましょう。
商品は違っても成分が同じということもあるので注意しましょう!
水稲用除草剤は数種類の有効成分を含んでいます。どの成分がどんな作用をするのか把握しましょう。商品名は違っても成分が同じものがあるので注意。除草剤のラベルのRACコードで検索すればWebで詳しく調べられます。
2.圃場の均平を丁寧に行う
圃場の凹凸が大きいと水の深さが均一にならず、薬が効く場所と効かない場所が出てきてしまいます。除草効果にムラが出るだけではなく、稲の植え付けが浅くなったり深くなったりすることで薬害リスクも高まります。
凸凹していると効果にムラが出る!
3.肥料のやりすぎは禁物
肥料が過剰だと、土の表層剥離が起こったり、藻が水に浮いたりすることがあります。水面浮遊物があると散布した薬が全体に拡散せず除草効果が低下。薬がたまったところには薬害が生じることも。土壌診断などを利用し適正な施肥を行いましょう。
水面浮遊物が除草の邪魔になる!
Q 効果的な防除の体系は?
苗を移植した直後に使う除草剤は「初期剤」と呼ばれ、稲に対する安全性が高い一方で、あまり持続性がありません。雑草が生えてから使う「中後期剤」は、稲が小さいうちに使うと薬害が出るリスクがあります。2回の防除は大変なので一回でなんとかしたいというのが「一発剤」です。一発剤だけで防除できればいいのですが、草が大きくなりすぎて雑草を取りこぼす場合もあるので、次のような体系防除を検討しましょう。
圃場によっては一発剤との組み合わせが必要!