この記事は2018年8月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT!
❶散布時にドリフトしないよう注意する。
❷散布器具類をしっかり洗浄する。
❸ラベルをよく確認し、誤った使い方をしない。
出荷された作物から、食品衛生法で定められた残留基準値を超えて農薬が検出された場合、その作物の流通は原則禁止となり、生産者や産地全体の信頼に大きな影響を与えます。そのようなリスクを回避するため、農薬散布時に注意すべきポイントを紹介します。
①残留基準値超過などの原因は何か
ホクレン農業総合研究所の他、道内の主な分析機関による作物残留農薬検査結果では、過去5年間で100件以上も「残留基準値を超過」したり、その作物に本来使用できない「適用外農薬を検出」する例が報告されています。
最も多い原因は「ドリフト」で「散布器具類の洗浄不足」も増えています(図1)。
ドリフトとは、目的以外の作物に農薬が飛散することです。適用がある作物の場合は、ラベルの指示どおり散布すれば残留基準値を通常は超えることはありません。
しかし、適用が無い場合は「人の健康を損なう恐れのない量」として定められた極めて微量の0.01ppm(1億分の1の量)が基準値となることから超過するリスクが高まります。
②農薬の残留基準値超過を防ぐ対策
(1)ドリフトに注意
農薬ドリフトの最大の原因は「風」です。風の弱い時を選び、適切なノズルと圧力で、できるだけ作物の近くから散布することが大切です。周辺圃場に収穫間近の他作物がある場合は特に注意が必要です(図2)。
(2)散布器具類をしっかり洗浄
ブームスプレーヤの場合、散布液を圃場で使い切り、残液を排出します。タンクに水をためエンジンを回し数分間循環させて排出後、タンク内を数回洗浄します。合わせてブームやノズルも忘れずにしっかり洗浄することが重要です(図3)。
(3)ラベルの指示どおり使用
農薬を使用する前に、ラベルに書かれた内容をしっかり確認することが大切です。殺虫剤の登録ラベルを例に、見方や留意点を紹介します。
農薬はそれぞれ使用できる作物や病害虫・雑草が定められています。特に適用作物の表示では、誤認しやすいものがあるので注意が必要です。図4のラベルでは、トマトには使用できますが、ミニトマトには使用できません(表1)。
また、単位面積(10a)当たりの使用量も決められており、それを超える濃度や量を使うことはできません。散布前に希釈倍率や使用液量をよく確認しましょう。使用できる時期も、収穫7日前までと記載されているので、散布した日を含め7日間は収穫できません。
総使用回数は、この農薬の使用回数だけではなく、同じ成分を含む農薬の使用回数なので注意が必要です(違う農薬でも同じ成分が含まれている場合があります)。ラベル確認を徹底し、誤使用を防ぎましょう。