この記事は2018年2月1日に掲載された情報となります。
所得の向上には、米を高く売ると同時に経費の削減も欠かせません。ホクレンは各種機関と連携し、低コスト&省力化を実現する新しい品種の開発や技術の研究も進めています。
品種開発
ホクレン 米穀事業本部
米穀部 米穀生産課 紺屋 貴弘 課長
答え「極多収品種の開発に向け光合成能力に着目した研究が始まっています」
ホクレンは北海道や道総研中央農業試験場などと連携し、平成27年度に「低コスト・省力化技術検討会議」を設立して、北海道の栽培環境に適した低コストで省力的な生産システムの検討・普及に取り組んでいます。
生産者の高齢化による作業負担の限界や、規模拡大による労働力不足など生産現場が直面する課題を、新品種の開発や新技術の普及で少しでもカバーしたいと考えています。
品種開発では、多収性に関する遺伝解析の研究を進めています。
これまでの品種開発は、粒の大きさや面積あたりの粒数など、目で見て分かる優れた能力「シンク能(のう)」を重視し育種選抜してきましたが、新たに葉の光合成能力や種子への養分供給能力、耐倒伏性など潜在的な能力「ソース能(のう)」に着目した評価方法の導入に向け、DNAマーカー開発の試験研究に着手しました。
既存品種対比130%多収を目標に極多収品種を早期に開発して、低コスト・省力化を後押ししたい。品種開発は時間のかかるものですが、加速度をつけて取り組んでいきたいと考えています。
また、田植えをせず、田んぼに直接種を播く直播の新品種の開発も継続中。食味もよく安定収量の見込める直播品種の開発を急いでいます。
品種開発はどのようなことに着目しているのか
これからの品種開発
生産技術
ホクレン 米穀事業本部
米穀部 米穀生産課 岩下 徳之 考査役
答え「経営環境に合った新しい栽培技術やICT機器に注目です」
北海道の稲作が持続的に発展するためには、経営規模の拡大や生産性の向上に対応するための新技術の導入が必要不可欠です。ホクレンでは平成28年度より新しい栽培技術やICT技術の実証試験を道内13カ所で実施。29年度は49カ所に増やして、普及に向けた検証を行ってきました。
栽培試験では、移植の株間を慣行栽培より広げる「疎植」、育苗箱に高密度で播種する「密苗」など、どちらも育苗コストの削減や移植の労力削減に着眼した栽培方法を試行。
収量では、疎植が慣行より若干下回るものの、密苗は慣行並みの結果が得られました。ICT分野でも水田センサーや自動給水装置を実際の生産現場で使用して、スマホからの遠隔操作で圃場の状態を把握するなど実用化に向けた課題の検証を行いました。
導入を検討される場合などは、お近くのJAやホクレン支所にご相談ください。
置床鎮圧育苗
ポット定置前に育苗ハウスの地面をローラーで鎮圧する方法です。成苗ポットの設置や、苗のはぎ取り作業がラクになるほか、軽トラが中まで入っていけるため作業時間が短縮します。
水田センサー「パディウォッチ」
田んぼの状態を離れた場所からスマホでチェックできます。水位・水温・気温・湿度が分かる上位モデルと、水位・水温のデータだけに絞った低廉モデルがあります。
圃場水管理システム
センサーで水田の水位と水温を感知。離れた場所からスマホ操作で給水と排水を行います。飛び地など水田の見回り作業の軽減に威力を発揮します。
疎植
株間を慣行栽培より広げるため、10aあたりの苗箱使用枚数が減ります。従来より苗が少なくて済むので、移植時の苗運びがラク。慣行栽培並みの収量が見込めますが、タンパクが若干高くなる傾向があります。
密苗
育苗箱に通常の3倍くらい密播することで、10aあたりの苗箱使用枚数を大幅に減らす方法。育苗資材や作業時間を削減できるものの、専用の移植機が必要になります。苗が小さいうちに移植するので温暖な地域向きです。