この記事は2018年2月1日に掲載された情報となります。
家庭での米の消費は減少傾向ですが、業務用や加工用は需要の拡大が見込まれています。高品質なプレミアム米だけではなく、さまざまな用途に応じた品種の生産が欠かせません。
ホクレン 米穀事業本部
米穀部 米穀総合課 駒形 剛 課長
「需要に応じた生産こそ、農業所得の向上につながります」
Q.所得向上のためにどのようなことをしていますか?
A.今年から各産地が主体的に「需要に応じた生産」に取り組むことになりました。
需要に対し供給が多すぎれば価格は下がりますし、足りなければ安定的に供給できず、取引先を失うことになりかねません。なによりも需要に応じて生産することが、安定供給とともに、農業者の所得向上につながると考えています。
米の需給が変動した場合にも、経営の安定を図るために力を入れているのが、実需を見据えた販売先との「複数年契約」です。29年産では、前年対比10万トン以上拡大させるなど、中長期的な需要確保を進めています。
さらには、中食(弁当類)や外食などの市場が伸びているので業務用需要への対応も重要です。品種などの特性に応じ、粘りがあって硬くなりにくいのでチルド弁当向き、粒がしっかりしていて酢飯に適するので寿司向きなど、具体的な試験データ等を提示しながら安定的で有利な販路開拓に取り組んできました。
こうした商談のバックボーンになっているのが、北海道の生産力と商品力です。銘柄や品位を指定して数千トン単位で契約に応えられる北海道だからこそ、強い競争力が発揮されます。
それだけに近年作付面積が減少していることは、需要に応える競争力を確保するうえで大きな課題です。生産基盤の維持に向け、低コスト・省力化栽培への取り組みも強化しています。
Q.所得安定のポイントは?
A.29年産米は、天候不順により東北や北陸などの生産量が落ち込んだこともあり、価格は上昇傾向で推移していますが、価格が上がると麺やパンなど米以外の需要が伸びて米の需要が落ち込む側面もあります。高値だからと主食用をいきなり拡大するのは危険です。
これまでのように生産数量目標を守れば交付金がもらえるというメリットがなくなるため、高く売れる米をより多くつくりたいと思う方もいらっしゃるでしょうが、ゆめぴりかなどのプレミアム領域の需要は、家庭用全体の9%程度。ニーズが限られるところに大量に供給すれば、価格は低下し自らの立ち位置を苦しくすることになってしまいます。
そこで取り組んでいるのが「用途別販売」です。主食用を中心としつつ、需給の動向を見ながら、加工用など用途別の需要に戦略的に対応していくものです。
生産の意向や販売実績などをベースに策定された「生産の目安」に基づき、需要に応じた生産を進めていくことが、「経営の安定」と「日本一の米どころ北海道」の実現を目指すうえで重要と考えています。
北海道米をめぐるマーケットのキーワード
●全国的に高い評価を受ける特A
※一般財団法人日本穀物検定協会調べ
「ゆめぴりか」「ななつぼし」は7年連続(平成22年産米〜平成28年産米)、「ふっくりんこ」は3年連続(平成26年産米〜平成28年産米)、食味ランキングで最高位の特Aを獲得するなど、食味にも高い評価を得ています。
●生産量約7.3%よりも多い販売量の割合約17%
※米穀機構 RPマンスリー販売POSデータ(平成28年10月〜平成29年9月)
全国750万トンのうち、北海道の生産量は約7.3%ですが、店頭で販売されている割合は約17%。相対取引価格も上昇傾向です。
●道民に支持される北海道米に成長 道内シェア9割弱
※北海道農政部調べ
道内の米消費量に占める北海道米の割合は87%(平成28年)。良食味米の品種開発や栽培技術の研究が実り、平成8年の37%から2倍以上に!
●家庭用向けのプレミアム米領域の需要は約9%
※米穀機構RPマンスリー販売POSデータ(平成28年10月〜平成29年9月)5kg精米2,200円以上の割合。
プレミアム、スタンダード、エコノミーで区分すると、プレミアム領域の購入者は約9%。需要構造とバランスをとった作付けが重要です。
●コンビニなど業務用高品質を安定的に供給できる強み
伸張する中食・外食需要には、均質で大ロットの供給が不可欠。大型集出荷施設を備えた北海道米は、コンビニエンスストアなど、大手需要先にも好評を得ています。