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米政策はどのように変わる?

キーワード:米政策

米政策はどのように変わる?

 

この記事は2018年2月1日に掲載された情報となります。

 

米政策はどのように変化してきたのか。そして今年からなにが見直されるのか。JA北海道中央会の夏井さんに、分かりやすく解説してもらいました。

 

夏井 萌さん

JA北海道中央会 農政部
水田農業課 主幹 夏井 萌さん

 

答え
「行政による生産数量目標の配分がなくなり、独自の判断が求められるようになります」

 

Q.米政策はこれまでどのように変化してきたのですか?

A.かつて米は政府が全量を買い入れて売る仕組みでした。しかし、1967(昭和42)年に100%自給化を達成して以降、米が余るようになり、それまでとは一転、いかに減らしていくかが課題になったのです。そして1971(昭和46)年から米の生産調整が本格的に始まり、以来40年以上にわたって続けられてきました。

その後、1993(平成5)年の大凶作と、ウルグアイラウンドの国際合意によるMA(ミニマムアクセス)米の受け入れにともない、食管法から食糧法に制度が変更。流通を民間に任せるようになります。国の役割は、いざというときのために備蓄をすること、米の輸入を管理することが中心になりました。

次の変化は2004(平成16)年。米政策改革大綱が実施され、食糧法が改正されました。大きく変わったのは、生産調整がネガ方式からポジ方式になったこと。それまでは「来年はこれだけの面積を減らしましょう」と国が都道府県に割り当てていたのですが、「これだけの数量をつくりましょう」と、需要に応じた生産数量目標を配分するようになりました。

さらに2007(平成19)年からは、生産数量目標の設定を民間に任せるかたちにしました。国は都道府県に需要動向の情報を提供し、都道府県が地域水田協議会に伝え、それを受けてJAなどの「生産調整方針作成者」が生産数量目標を生産者に面積として配分することになったのです。しかし、この情報提供はトップダウンで、実際は国の配分とかわりませんでした。

 

米政策の変遷

米政策の変遷

 

1967年 米の完全自給を達成
●米の消費量減少
●生産技術向上などによる生産量の増加
【過剰生産・財政負担増】

1969年 自主流通米制度の実

1971年 米の生産調整本格化

1993年 作況74の大不作
ウルグアイラウンド合意によるMA米の受け入れ

1995年 食管法から食糧法へ
【流通の民間化・国の役割が備蓄、輸入管理へ】
●国の役割が変化
食管法(米の管理・流通)から、食糧法(米の備蓄・輸入管理)へと変化
●生産調整が法律上明文化

2004年 米政策改革大綱改正食糧法
●米づくり本来のあるべき姿の実現を目指して生産調整がネガ方式からポジ方式へ
【ポジ方式へ転換】
ネガ方式(作らない面積を割り当て)から、ポジ方式(需要に応じて作る数量を配分)へ

2010年 戸別所得補償制度を導入

2013年 農林水産業・地域の活力創造プラン
米の生産調整の見通しを含む米政策改革の実施を決定

2014年 米価変動補填(ほてん)交付金が廃止

2018年主食用米への助成を廃止
●国が生産量を決めるのではなく都道府県が独自で生産量を考えて目標を設定
●生産量をどうするかは、生産者の裁量によるところが大きくなる

 

質問
米政策が変わって「どうする?」「どうなる?」

 

Q.今年から、なにが変わる?

A.2018年、国は全国ベースでの需要見通しは示すものの、都道府県別の生産数量目標の割り当てをやめました。

これまでは国が示した数字に基づいて生産していればよかったのですが、これからは都道府県の関係者が独自で生産量を考えなくてはなりません。

米価が上昇基調なのか下落基調なのか、北海道米の在庫が多いのか少ないのか、市場で売れているのかいないのか、総合的に考えて、去年より減らすべきか、それとも増やした方がいいのか、自分たちで判断する必要があるのです。

 

Q.去年より増やす? 減らす?

A.国が示した今年の需要量は据え置きの735万トン。北海道では、北海道米の需要は堅調なものの、近年北海道の水稲作付面積が減少していることから、現在の需要に安定的に供給するため、29年産と同水準の約9万9千haを生産の目安としました。

また、生産量は統計の面積当たりの平年収量増加で、昨年より5千トン多い、54万1千トンとなっていますが、作付規模は変わっておりません。

今後、地域再生協議会ごとに示される「数量」と「面積」の目安は、生産者別に提示することを基本に、地域ごとに検討されます。

 

生産の流れ

 

Q.生産量は誰が決めるの?

A.これまで国が示した数字に基づいて認定方針作成者が配分したものを「生産数量目標」と呼んできましたが、今年からこの目標はなくなります。北海道ではそれに代わるものとして「生産の目安」を設定します。

協議するのは、道庁をはじめ、農業団体、集荷業者などで組織する「北海道農業再生協議会」の水田部会。これまでの販売実績や北海道米に対する需要などを踏まえた上で全道の目安を割り出します。

さらに今回は産地ごとに作付けの意向を初めて調査。米の生産を徐々に減らしていきたい産地と、米を中心にやっていきたい産地、それぞれの意向にあわせて地域ごとに調整しました。

 

Q.生産の目安を守らないとどうなる?

A.これまでのように生産数量目標を守れば補助金がつくというメリットはなくなるので、好きなだけ自由につくりたいという方もいるかもしれません。

仮に生産者が少しずつ生産量を増やすと、全道ではかなりの増産となり、需給がだぶついて値崩れを招く恐れがあります。

生産の目安は「道内でこれだけの量があれば安定して販売できるし、農家所得も確保できる」という数字です。もちろん平年作で採れた場合の数字で、作況によって変わってしまう難しさはありますが、まずはこの目安を達成することが、農業者の経営安定につながるはずです。

 

生産量と需要の比較

 

Q.生産調整の仕組みはなくなるの?

A.国は生産調整のための交付金をやめるわけでありません。主食用以外の作物への「水田活用の直接支払交付金」は継続します。主食用米にくらべ収益性の劣る麦や大豆、飼料用米をつくれば交付金が支給されます。

もし「なんでも好きにつくっていいですよ、国は関知しません」というのなら、水田活用の交付金も廃止するはず。転作のメリットは残し、それによって生産調整できる仕組みになっているのです。

とはいえ「米の直接支払交付金」による主食用米への支援である7,500円/10aがなくなる影響はあるでしょう。1俵に換算すると800円くらいになりますが、上昇基調にある米価を維持、もしくはもう少し上げるとともに、経費を抑えることも重要になってくるでしょう。

技術革新や品種改良なども積極的に取り入れる姿勢が求められます。

 

生産調整の仕組み

 

Q.将来の見通しは?

A.私たちが重視すべきなのは水稲全体の面積だと考えています。主食用米の市場が伸びているときには主食用米の作付けを増やす、米価が下落傾向のときは安定的な需要が見込める加工用米を増やす、というように局面に応じて切り替えながら全体のパイを増やしていくのが理想です。

こうした微調整は、ある程度の水張面積がなくてはできません。現実には北海道の水張面積は毎年千haずつ減り続けています。このままのペースで減っていけば7年後には主食用米をつくるだけで手一杯になります。

生産者の高齢化が進んで府県の生産力が落ち、北海道でもっと米をつくってほしいという状況になっても、水張がなければ難しい。だから、主食用米・加工用米・飼料用米にこだわらず、米をつくって水田を維持してほしいのです。

高齢の生産者が離農すると、地域の担い手が農地を引き受けるかたちで大規模化が進んでいます。しかし、米はほかの作物に比べて手間がかかるので、労働力不足から麦や大豆など機械を使える作物に置き換わってしまうケースが少なくありません。

この先、全道の水張面積を維持できるのかが最大の課題になってくるでしょう。

 

将来の見通し