輪作のカタチ 

地域それぞれの輪作スタイル

地域それぞれの輪作スタイル

気象条件や営農形態に合わせて、さまざまな輪作が実践されています。岩見沢市、帯広市、別海町の三つのエリアで、優れた実践例を取材しました。

この記事は2020年12月1日に掲載された情報となります。

水稲も組み込んだ空知型輪作|岩見沢市|

JAいわみざわ 営農相談部門 調査役 大宮 傑さん(左) 空知農業改良普及センター 普及指導員 図師 拓也さん(中央) JAいわみざわ 農業振興部門 調査役 水口 貴文さん(右)

JAいわみざわ 営農相談部門 調査役 大宮 傑さん(左)
空知農業改良普及センター 普及指導員 図師 拓也さん(中央)
JAいわみざわ 農業振興部門 調査役 水口 貴文さん(右)

輪作作物のひとつに水稲も選択できるのが「空知型輪作」の強み。田畑輪換しやすい乾田直播や無代かき移植栽培の導入も進められています。

水稲も組み込んだ空知型輪作

ポイント
どの作物でも安定して収量を確保できる汎用田づくり
田畑輪換しやすい乾田直播や無代かき移植栽培の導入

内容
●取り組みの経緯

小麦や大豆の連作障害、水稲移植栽培の田植え時の人手不足、育苗管理やごみあげ作業などの課題解決のために始まりました。JAや農業改良普及センターが中心となり田畑輪換による輪作を推進。岩見沢市北村豊里のモデル実証により普及が進んでいます。

●効果
乾土効果による減肥、雑草や病害虫の減少による連作障害の回避や農薬使用量減によるコスト低減、圃場の透排水性改善、収量向上、作業分散などの効果が得られています。

●特徴
空知型輪作では4年3作以上を推奨しています(この体系で、小麦が安定多収になる結果が得られています)。水稲、麦、大豆に続く第4の品目として、なたね、直播てん菜、子実用・飼料用とうもろこしなどを導入する生産者も増えています。畜産農家が少なく堆肥を入手しにくい空知では、輪作が畑に有機物を還元する有効な手段にもなっています。

 

耕畜連携で理想の輪作体系|帯広市|

帯広市農業振興公社 技術指導員 三浦 康雄さん(左) 十勝農業改良普及センター 地域係長 桝谷 英生さん(中央) 十勝農業改良普及センター 普及職員 安藤 大裕さん(右)

帯広市農業振興公社 技術指導員 三浦 康雄さん(左)
十勝農業改良普及センター 地域係長 桝谷 英生さん(中央)
十勝農業改良普及センター 普及職員 安藤 大裕さん(右)

耕種農家が、畜産農家(肉牛・酪農)から飼料用とうもろこしの栽培を受託。営農品目の異なる農家が協力して、輪作体系をつくっています。

耕畜連携で理想の輪作体系

ポイント
耕種農家は新規作物導入で輪作体系を改善
畜産農家は自給飼料を地元で安定的に確保

内容
●取り組みの経緯
省力作物で輪作体系を構築できる作物を探していた耕種農家と、良質な自給飼料を地元で確保したい畜産農家のニーズがマッチしたことがきっかけです。耕畜連携は道内でも事例が見られますが、JA帯広かわにし管内では、JAが生産者同士の仲介、農業改良普及センター・農業振興公社は技術指導、帯広市は事業支援と役割分担して地域全体で取り組んでいます。

●効果
連作が減り、多様な品目による輪作の適正化が進み、畑作品目の収益性も向上。畜産農家でも自給飼料の確保率が向上しました。現在は42戸が参加し、165haに拡大しています。

●特徴
飼料用とうもろこしの作付けは、耕起から追肥・防除を耕種農家、収穫を畜産農家が行います。飼料用とうもろこしの播種前にライ麦(前年9月播種、5月収穫)を作付けするケースもあります。作業以外に、堆肥や麦稈のやり取りも増えています。

牧草と飼料用とうもろこしの輪作|別海町|

ホクレン畜産生産部 自給飼料課 主任技師 岩渕 慶(農学博士)

ホクレン畜産生産部 自給飼料課
主任技師 岩渕 慶(農学博士)

草地を起こして飼料用とうもろこしを栽培することで、雑草の侵入を抑制。良質な粗飼料生産が期待できます。

牧草と飼料用とうもろこしの輪作

ポイント
牧草と飼料用とうもろこしの輪作により雑草が減少
牧草の品質も収量も向上しコストダウンに

内容
●北海道の状況
北海道内には何十年も更新されていない草地もありますが、農業試験場のデータでは、8年に1度は更新することが望ましいとされています。牧草の輪作を行っている多くは畑作酪農地帯で、根釧地区のような草地酪農地帯では条件的にも難しくなります。その中で別海町の橋本さん(アグリポート28号 11ページ参照)は先進的に取り組まれています。

●欧州の状況
欧州では草地の輪作が普及しており、例えばデンマークでは草地利用は3年で、その後、とうもろこし、麦などを作付けしています。草地利用期間が短いため、多草種の混播が可能で良質・多収な飼料生産につながっています。

●効果
輪作することで雑草の侵入や裸地などが減少。良質な自給飼料を増やすことで、飼料のコスト減や乳量増加も期待できます。また、輪作による畑起こしなどのコストは、3〜4年でペイできることが試算されています。