ポイント
❶圃場を早く乾かして、排水対策を入念に
❷昨年の結果と土壌診断を踏まえて、圃場ごとに施肥設計を
❸育苗中は高温に当てず、適期内の移植を心掛ける
❹いもち病の早期発見とイネキモグリバエ被害に留意
❺【新品種】「きらら397」「そらゆき」に換わる業務用向け品種が登場
❻【新技術】有機栽培の効果的な除草方法が明らかに
この記事は2023年4月1日に掲載された情報となります。
北海道農政部 生産振興局
技術普及課 主査
上田 朋法さん
ポイント❶
圃場を早く乾かして、排水対策を入念に
春先のスタートが出来秋を左右します。冷害に備えて深さ20cm以上の水を貯められるよう畦(あぜ)の嵩(かさ)上げはもちろん、排水対策(溝切り、心土破砕)など、入念な圃場づくりが欠かせません(写真1、2、3)。そのためには融雪材(ケイ酸質資材)の施用などで融雪を早め、圃場の乾燥を促進しましょう。
ポイント❷
昨年の結果と土壌診断を踏まえて、圃場ごとに施肥設計を
昨年は7月後半の曇雨天で稲が軟弱徒長気味になり、8月中旬の風雨による倒伏が目立ちました(写真4、5)。倒伏やなびきが見られた圃場では窒素が過多になっている可能性があります。土壌診断を行い窒素肥沃度(可給態窒素量)を再確認し、乾土効果や有機物施用に対応した減肥を実施するなど、窒素施肥量について見直しましょう。昨年の生育の経過、収量・品質(精米タンパク)の実績と、土壌診断の結果を照らし合わせ、圃場ごとに施肥設計を練り直すことが、収量、品質の向上や経営の安定化につながります。
ポイント❸
育苗中は高温に当てず、適期内の移植を心掛ける
昨年は生育に大きな地域差がありました。特に6月上旬の低温・強風により移植が遅れた圃場では、初期生育が不良となり、その後の茎数、穂数確保にも大きな影響がありました。
近年の気象は5月下旬に高温となり、6月に天候が悪化する傾向です。成苗ポットでは「2.5葉期以降は25℃以上にしない」という基本技術を守ることで、早期異常出穂のリスクを回避できます。「苗床で高温に当たる前に移植し、低温に備えて早期活着させる」ことを意識して、5月25日までの早期移植に努めましょう。播種作業を分散したり、育苗方法についても検討の余地があります。
ポイント❹
いもち病の早期発見とイネキモグリバエ被害に留意
昨年は8月中旬に「穂いもち」の発生が散見されました。いもち病は保菌した稲わらや籾殻が感染源となるため、育苗ハウスやその周辺への稲わらや籾殻の放置は、絶対にやめましょう。BLASTAM(葉いもち発生予測システム)の利用や発生予察(見歩き調査)により、葉いもちの早期発見、早期防除に努めてください。
また今年、注意を要する病害虫としてイネキモグリバエ(イネカラバエ)が示されています。葉先枯れや葉鞘(ようしょう)の黄化のほか、遅い時期に加害されると穂が傷つき、出すくみ、芯枯れなどが生じます。窒素肥料の多用を避け、畦畔(けいはん)のイネ科雑草を除去するなどの対策を講じましょう。昨年多発した水田ではイネキモグリバエに登録のある箱施用剤で被害を防いでください。
ポイント❺【新品種】
「きらら397」「そらゆき」に換わる業務用向け品種が登場
新品種「空育(くういく)195号」は「きらら397」「そらゆき」に比べ、1㎡当たりの籾数が多く、収量性に優れています。穂いもち圃場抵抗性は”強”で、いもち病の本田薬剤防除も省略が可能。中食・外食向け用途に適しており「きらら397」「そらゆき」に置き換えての普及が期待できます。
たくさん穫れて病気にも強い!お米新品種「空育195号」(資料)
https://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/shingijutsu/41/01.pdf
ポイント❻【新技術】
有機栽培の効果的な除草方法が明らかに
除草剤を使わない有機栽培は、除草に手間が掛かります。中央農試では苗の移植後15日以内に駆動式水田除草機で1回目の除草をし、7〜10日間隔でのべ3回実施すると除草効果が安定することを明らかにしました。また、ヒエやホタルイが優占する水田では、2回の代掻きと組み合わせて駆動式除草機を使用することにより、除草時間を大きく減らすことができます(10a当たり5人・時以下)(図2)。