盗難や犯罪を防ぐために

鳥獣による食害だけではなく、盗難の被害防止についても考えておきましょう。北海道警察で犯罪抑止対策に取り組む千島孝洋警部に聞きました。

この記事は2021年6月1日に掲載された情報となります。

北海道警察本部 生活安全部 生活安全企画課 警部 千島 孝洋さん

北海道警察本部
生活安全部 生活安全企画課
警部 千島 孝洋さん

農作物の盗難被害は全道で発生

農作物の盗難被害のニュースをときおり耳にしますが、増えているのでしょうか。北海道警察本部の千島孝洋警部によると「昨年の農作物の盗難被害の件数は45件、被害総額は58万円。増えているとも減ってきているとも言い切れない」とのこと(図1)。ただし、この数字は警察に届け出されたものだけで、かつ農業者に限らず家庭菜園の作物も含めての統計。被害は5〜11月まで全道域で確認されており、品目では米、ミニトマト、玉ねぎ、とうもろこし、ぶどうなどが目立つそうです。

農作物の盗難被害件数と被害額(北海道内)
図1. 農作物の盗難被害件数と被害額(北海道内)

地域ぐるみの警戒で犯罪を抑止

作物は畑から直接盗まれるほか、敷地内のコンテナや保管中の倉庫から盗難されるケースもあります。関東地方では牛や豚などの家畜が大量に盗まれる事件がありましたが、道内ではそうした規模の盗難事件は認知されていません。

道内ではある地域でミニトマト農家を狙った連続盗難が発生した事例があります。「この時は管轄警察署と地域の生産者が連携し、署で〈特別警戒中〉の立て看板を作って圃場に設置したり、重点的なパトロールを実施したりして、以降の盗難の発生を抑止しました」と千島警部。このケースからも分かる通り、盗難被害を防ぐには地域全体で警戒を怠らないことが大切です。

自主防犯意識を高めるために

具体的にはどのような対策を講じたらよいのでしょう。千島警部は「最も大切なのは自主防犯意識を高めること」だと言います。収穫物やコンテナ、脚立、作業道具などは放置せずに片付けること、ハウスや保管庫の窓や出入口には鍵をかけること、圃場にはネットや柵を設置して侵入しにくい環境をつくることなど、できることから取り組みましょう。

「そのうえで防犯カメラ、センサーライト、警報器などの防犯機器の活用を検討してください」と千島警部。泥棒にとって防犯意識の高い家は入りにくいもの。「目立つところに防犯カメラ作動中などと書いたステッカーや看板を掲示すると、更に効果的です」

また、盗難被害や不審者情報などを地域で共有し、お互いに注意を呼びかけあうことも大切です。

「行き当たりばったりの犯行は別として、手慣れた窃盗犯は下見をすることが多い。見慣れない人や車がうろうろしているときは警察に通報したり、地域で防犯パトロールをしたり、まずはできることから実践してください」

農作物盗難とは別に、空き巣、忍び込み、倉庫荒らし、車上ねらい、自動車盗難なども発生しています。いずれも施錠していなかったり、車のキーをつけっぱなしにしていたりして被害にあうケースが多く見られます。千島警部は「繁忙期の農家さんの家が不在がちになることは容易に想像がつきます。うちは大丈夫と思わず、確実に施錠してください」と注意を促しています。

盗難被害を防ぐ三つのポイント

防犯グッズの活用

POINT1|防犯グッズの活用
防犯カメラ、センサーライト、警報器などはホームセンターなどでリーズナブルに購入できるようになりました。窃盗犯は車を使うことが多いので、車が通るポイントにカメラを設置すると効果大。音が鳴る警報器も嫌がります。

確実な施錠

POINT2|確実な施錠
窓の場合、施錠していても、熟練の窃盗犯は窓ガラスの施錠箇所だけ器用に音を立てずに割って解錠します。万全を期すには、錠の周辺部分のガラスに防犯フィルムを貼ったり、内側から補助錠を設置したりして備えましょう。

「ほくとくん防犯メール」「北海道警察の公式Twitter」などの防犯対策

POINT3|防犯情報の入手
道警では昨年からJA北海道中央会を通じてJA経由で防犯情報を組合員に発信しています。そうした情報をこまめにチェックするほか「ほくとくん防犯メール」「北海道警察の公式Twitter」などを防犯対策に活用ください。

お住まいの地域を登録すると、地元の犯罪発生などをメールで知らせてくれる「ほくとくん防犯メール」。
https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/seian/bouhan_mail/bouhan_mail.html


特殊詐欺にも要注意

農業者に限らず全道で特殊詐欺の被害が後を絶ちません。最近多いのは「還付金詐欺」と「預貯金詐欺」。だまされないよう気を付けましょう。

還付金詐欺

【還付金詐欺】
市町村の職員を名乗って電話をかけてきて「介護保険料を返します」と金融機関のATMに誘い出し、操作を指示して逆に現金を振り込ませます。「ATMでお金が戻る」「通話しながらATMを操作」は詐欺です。

預貯金詐欺

【預貯金詐欺】
警察官や役所の職員をかたって自宅を訪問し「あなたのキャッシュカードが事件に使われている可能性があるので警察に提出してほしい」など言葉巧みにカードをだましとる手口です。高齢者の方が被害にあうケースが多いので「キャッシュカードは渡さない」「暗証番号は教えない」を徹底してください。