VOL.5

睡眠の質を上げて快適に過ごす

キーワード:睡眠睡眠トラブル睡眠リズム

睡眠の質を上げて快適に過ごす

春は何かと忙しい季節。「ゆっくり寝ていられない」ということがあるかもしれません。しかし、睡眠は健康の基本。忙しいからこそ睡眠の質を上げて快適に過ごしましょう。今回は睡眠についての正しい知識を、札幌花園病院で睡眠医療を専門にする本間さと先生に伺いました。

この記事は2023年4月1日に掲載された情報となります。

特定医療法人社団 慶愛会 札幌花園病院 睡眠医療センター センター長 本間さとさん

特定医療法人社団 慶愛会
札幌花園病院
睡眠医療センター
センター長 本間さとさん

Profile:1972年北海道大学医学部卒、1976年北海道大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士、日本睡眠学会専門医。北海道大学医学部・医学研究科生理学教授、北海道大学脳科学研究教育センター客員教授を経て、特定医療法人社団慶愛会札幌花園病院・医師。

 

生活を整えて安定した睡眠リズムをつくろう

私たちが寝ている間、身体の中では成長や修復、脳内では記憶の整理や老廃物の除去など、心身の機能を維持するためにさまざまなことが行われています。そのため睡眠不足が重なると、めまいなどの軽い症状だけでなく、生活習慣病やうつ病などにつながることもあります。睡眠が健康にとって大切なのは分かっていても、日本人の4人に1人は不眠のトラブルを抱えているのが現状です(図1)。

不眠症の有病率
図1.不眠症の有病率不眠症の有病率(20歳以上の日本人成人1,871名対象調査)
Doi Y et al.: J Epidemiology ;10(2);79, 2000より

生産者の皆さんは早朝から戸外で作業するなど、睡眠に最適な生活リズムで暮らす方が多いはず。もし農作業で体は疲れているのに、眠りが浅い、眠れないという方は生活スタイルを見直しましょう。

まず、たばこには覚醒作用があるため、夕食後は控えてください。寝酒をする方がいるかもしれませんが、飲酒は睡眠の質を下げます。眠れなくて飲酒するのであれば適切に処方された睡眠導入剤などを使ったほうが効果もあり、睡眠の質を高められるでしょう。

光には体内時計をリセットさせる効果があります。朝の光を浴びないと体内時計がずれてしまい、朝起きがつらくなり、休日に夜ふかし朝寝を繰り返す社会的時差ぼけにつながります。そのため、朝はしっかりと日を浴びましょう。作業日程などでどうしても時間が不規則になる場合は、あらかじめ「必ず寝る時間帯」を決めます。休日にゆっくり寝たい時でも、決めた時間帯は守り、ずらさないことが大切です。

しっかりと睡眠をとっても疲れがとれない時は、睡眠の質が低下しているかもしれません。場合によっては睡眠時無呼吸症や、手足が動いてしまう周期性四肢運動障害などの睡眠障害を発症していることがあります。スマートウォッチで睡眠を見える化するのもいいですが、過信せず早めに専門の医療機関で受診してください。

睡眠のポイント❶
目安は7〜8時間 ただし個人差があります

一般的に「8時間睡眠」が良いといわれますが、医学的根拠はありません。最適な睡眠時間は人それぞれ。日中、元気に過ごせれば、睡眠時間は十分足りています。寿命と睡眠の関連を調べた調査では長すぎても、短すぎても良い結果にならず、7時間が最も長生きというデータが出ています。

睡眠のポイント❷
睡眠ルーティンをつくる

睡眠のポイント❷ 睡眠ルーティンをつくる

寝付けなくても、焦らないこと。眠る1〜2時間前に「ぬるめのお風呂に入る」「簡単なストレッチをする」「ゆっくりと腹式呼吸をする」など、リラックスできることをルーティンとして行い、眠るようにしましょう。

睡眠のポイント❸
深部体温が下がると眠くなる

睡眠のポイント❸ 深部体温が下がると眠くなる

夜になると睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」が分泌され、皮膚血管を拡張して体表から熱を逃すことで深部体温(身体の中心部の温度)を下げ、良い睡眠を誘発します。床に就くころに手足がポカポカしているのが理想的。冷え性の方は、皮膚血管を拡張させ体内の熱を逃げやすくするために湯たんぽなどで手足を温めるのがおすすめです。

睡眠のポイント❹
仮眠は30分まで

睡眠のポイント❹ 仮眠は30分まで

農作業などで激しく動いたり、強い日光に当たったりした後は、昼食後に仮眠をとるのも良いでしょう。夜の睡眠に影響しないよう仮眠は15時までに、30分以内でとるのがおすすめ。うとうとする程度の居眠りでも十分な効果があります。

睡眠のポイント❺
布団は寝るだけの場所

睡眠のポイント❺ 布団は寝るだけの場所

布団に入るのは寝る時だけ。眠れない時に布団に入り、ダラダラ過ごすと眠れなくなることもあります。もちろん、布団に入ってスマートフォンを見てはいけません。画面の光は体内時計に悪影響を及ぼし、睡眠の質を下げます。眠れない時は布団から出て、眠くなったら布団に入るようにしましょう。

特定医療法人社団慶愛会 札幌花園病院

特定医療法人社団慶愛会 札幌花園病院

札幌市中央区南15条西15丁目1番30号
Tel.011-561-6131

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