この記事は2023年2月1日に掲載された情報となります。
大玉トマトの栽培において、点滴チューブと自動潅水システムを利用し、薄い養液を少量高頻度で与え続けることで約1.4t/10aの増収を達成しました。
ホクレン営農支援センター 営農技術課
点滴・自動潅水で楽して増収を
現在、トマトの追肥・潅水の基本は「第3花房が開花した時に1回目の追肥と潅水を開始し、その後は毎日あるいは数日おきの潅水、新たな花房開花ごとの追肥を繰り返す」となっています。ただ、トマトは比較的多く潅水する作物なので、定期的な追肥も日々の潅水で地下に押し流され、吸収されない肥料も多いと考えられます。
そこで、追肥・潅水を分けて行うのをやめ、点滴チューブと自動潅水システムを利用して薄い養液を少しずつ高頻度で与え、作物が「養分・水分を常に必要なだけ使える状態」にすることで、省力的でかつ大玉トマトの収量を上げることができるか、検証しました。
点滴栽培に必要なものや方法
今回実証した点滴栽培の詳細な方法は表1、図1のとおりですが、慣行栽培との主な違いは次のようになります。
❶点滴栽培のための機器・資材・電源が必要
❷基肥が不要
❸薄い養液を第2花房開花から少量高頻度で施用
❹一部の果房の摘果は行わない
❶に関して、ハウス内に電源が無い場合、例えば、近くの納屋に電源があれば、水路をそこから伸ばす方法もあります。
❷・❸に関して、基肥での窒素、リン酸、カリの施用は基本的に行いませんが、pH矯正やカルシウム施肥は必要になってくると考えています(本試験では無施肥)。基肥を行わない代わりに、薄い養液を第2花房開花から与えていきます。肥料成分量でみると慣行対比50〜70%、水量でみると1株当たり1日に0.5ℓです。これらの管理は自動潅水システム(写真2)に任せられますが、開始前には狙いの水量・養液量が流れているか、必ず確認します。水量は流量計で、養液量は計量カップなどを使って液肥混入器から試しに吸わせてみることで確認できます。また、点滴チューブは金属成分の多い水では詰まってしまう可能性が高いため、そのような原水は避けてください。
❹が増収に直接的に結びつくことになりますが、慣行で同じことをしても着果負担に耐えられず、上位花房が落花してしまいます。このことから、点滴栽培は、効率的な施肥によって着果負担への耐性を上げてより多くの果実を収穫できる技術といえます。
12%の増収効果により、2年で機器・資材コスト回収を見込む
2022年の実証では収量調査の結果、慣行で11.0t/10a、点滴栽培は12.4t/10aで慣行対比12%の増収となりました(図2)。慣行との収支比較は表2のとおりで、電気設備代を含めて2年でコスト回収が見込めます。また、本年度はあくまで検証ということで摘果無しの段数を少なめに抑えていました。そこで、次年度からは摘果無し段数の増加や肥料コストの見直しなどで更なる増収・収益アップを図っていきたいと考えています。