自動潅水(給液)システム利用型栽培体系の確立

自動潅水システム
写真1. 自動潅水システム

カテゴリー:実証試験
実施年度:2021~2024年度
対象:JAとまこまい広域、JAむかわ、JAにいかっぷ
実施:苫小牧支所営農支援室
協力関係機関:胆振農業改良普及センター東胆振支所

POINT
●自動潅水(給液)システム導入による省力化と軽労化の実現

この記事は2022年11月1日に掲載された情報となります。

施設園芸の省力化等が課題に

胆振・日高管内では、夏は冷涼、冬は少雪の気候を生かした施設園芸生産が盛んに行われています。

近年、農家数の減少や担い手の高齢化、労働力不足の深刻化などにより、施設園芸分野のスマート農業技術や省力化・軽労化の実現、新規就農者への栽培技術継承が必要不可欠となっています。

自動潅水(給液)システムの検討

施設園芸分野の課題について管内の各JAと協議を行い、今後の生産力の維持・向上には、ハウス環境の制御自動化による省力化が欠かせないとの認識を共有しました。

そこで、JAとまこまい広域、JAむかわ、JAにいかっぷの3JAが、自動潅水(給液)システムの実証試験を行い、省力化技術の普及と栽培体系の確立に向け取り組むこととなりました。

ハウストマト栽培の省力化実証

JAむかわ管内のトマト部会では、生産者約60戸がハウス約800棟、合計約27haで夏秋どり栽培を中心にトマト栽培を行っています。2017〜21年度の5年間で、部会員数は17%減少しており、効率化・省力化が求められています。

2021年度の実証では、1戸の生産者圃場において、全24棟のハウスのうち、8棟に自動潅水(給液)システムを設置し試験を行いました(写真1・2、表1)。

JAむかわ管内の生産者圃場
写真2. JAむかわ管内の生産者圃場
耕種概要(2021年度)
表1. 耕種概要(2021年度)

生産者からは「試験区は収穫繁忙期でも潅水頻度を上げることができ、猛暑であったにもかかわらず、尻腐れ等の生理障害の発生が少なかった。2022年度は新しい井戸を作り、トマト作付け予定の全24棟で自動潅水制御を行う」との感想を聞き取ることができました。

潅水の設定に必要なタイマーセットや液肥混入の作業を1人で行うことができる(1棟当たり所要時間は約5分)ため、慣行区と比較して潅水の労働時間を約9割削減することができました(表2)。

労働時間調査結果(推定)
表2. 労働時間調査結果(推定) ※胆振農業改良普及センター東胆振支所調べ

総収量については、慣行区が上回ったものの、規格内収量は試験区が上回り、箱出荷の規格内A品、BC品のいずれも試験区が慣行区を上回りました(図1)。

規格別収量の比較
図1. 規格別収量の比較

また、裂果の割合も慣行区が23.5%のところ試験区では3.4%と大幅に少なく、システム導入により土壌乾湿の差が小さくなったことによるものと考えられます(図2)

規格外内訳
図2. 規格外内訳

今後の取り進め

JAとまこまい広域のトマト・ミニトマト栽培、JAにいかっぷのピーマン栽培でも同様の実証試験を行っており、自動潅水装置の有効性の確認を進めています。この成果を自動潅水(給液)システムを活用した栽培方法の確立・普及につなげていけるよう、情報共有を図っていきます。