防除

畑の健康診断でブロッコリーを根こぶ病から守ろう

この記事は2022年8月1日に掲載された情報となります。

北海道立総合研究機構 中央農業試験場
病虫部 病害虫グループ 研究主幹 西脇 由恵

POINT
●事前にブロッコリー作付け予定地の健康診断をすることで、それぞれの圃場に合った根こぶ病対策を選べます。

道内のブロッコリー栽培で、アブラナ科野菜の大敵、根こぶ病(写真1)に悩まされる圃場が増えています。本病は土壌病害のため、発生に気付いた時に直ちに取れる対策は残念ながらありません。そこで、人間が健康診断結果で治療したり生活習慣を改善したりするように、土壌病害を畑の健康診断に基づいて管理する考え方で、ブロッコリー根こぶ病を対象に、作付予定畑の健康診断から各圃場に合った対策を選択できる手順をまとめましたので紹介します※。

ブロッコリー根こぶ病
写真1.ブロッコリー根こぶ病
※農林水産省委託プロジェクト研究「AIを活用した土壌病害診断技術の開発」で得られた成果

道内の発生状況と根こぶ病が出やすい条件

2017〜2021年にかけ道央圏内を中心に延べ394圃場で発生状況を調査したところ、188圃場で根こぶ病が発生していました。れや生育不良などの被害が生じたのは60圃場で、各圃場の耕種概要や土壌理化学性、土壌中の菌密度を調べると、❶ブロッコリー連作、❷同圃場で年2回作付け、❸土壌からの病原菌検出、❹排水不良、❺土壌pH‌6.5未満、❻過去の本病発生、❼アブラナ科作物連作、❽生産者所有の他圃場での発生、に該当する圃場で発病程度が高い傾向がありました(図1)。

ブロッコリー根こぶ病の多発要因(■が多発要因、( )内数値は該当圃場数を示す)
図1.ブロッコリー根こぶ病の多発要因(■が多発要因、( )内数値は該当圃場数を示す)

対策の組み合わせで防除効果が向上

本病は明きょ設置による排水性改善で発病が軽減されました。アミスルブロム水和剤DFのセル苗灌注やアミスルブロム粉剤の全面土壌混和も防除効果が認められ、併用すると甚発生圃場でも十分な発病軽減効果が認められました。また、おとり作物を甚発生圃場に作付けしたところ、緑肥用大根で裸地に比べ土壌の病原菌密度や発病が減り、(発病を抑制できない)感受性品種に比べ、抵抗性品種は発病が少なくなりました。そして、薬剤の土壌混和と緑肥用大根、抵抗性品種を組み合わせることで、防除効果が向上しました(表1)

ブロッコリー根こぶ病に対する薬剤土壌混和、おとり作物の作付け、抵抗性品種利用の組み合わせ効果(甚発生圃場)
表1.ブロッコリー根こぶ病に対する薬剤土壌混和、おとり作物の作付け、抵抗性品種利用の組み合わせ効果(甚発生圃場) ※1.裸地区も含めアミスルブロム粉剤30kg/10aを処理した。 ※2.2020年の( )内の各値は感受性品種での裸地区の値50.0に対する減少率を示す。 ※3.2020年の< >内の各値は2018年の発病度の値71.0に対する減少率を示す。

圃場診断・対策支援マニュアルをご活用ください

本マニュアルは「圃場を診断する」、「発病ポテンシャル(発病の可能性)を評価する」、「発病の可能性に応じた対策を選ぶ」の三つのステップです(図2)。診断項目は多発要因を六つに整理し項目ごとに点数化、その合計点によって圃場の発病のしやすさを四つのレベルに分け、そのレベルに応じた対策レベル・防除目標と対策メニューを設定しました。

ブロッコリー根こぶ病圃場診断・対策支援マニュアル
図2.ブロッコリー根こぶ病圃場診断・対策支援マニュアル

本マニュアルを活用し129戸の圃場で、圃場に応じた防除技術を選択すると、想定された発病レベルよりも低い発病に抑えることができました(適合率95%)。特にレベル3(被害が出る可能性が高い)では、マニュアルを活用した7圃場のうち6圃場で被害が出ませんでした。

根こぶ病は多発するとその後の防除が非常に難しいため、被害に至らない低いレベルに圃場を維持することが重要です。発生や被害が顕在化しないうちから、本マニュアルをぜひご活用ください。

本マニュアルの表はHPでも公開しています。
https://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/seika/nekobu/index.html