貯蔵

MAフィルムと電場処理技術を併用したメロンの長期貯蔵技術

この記事は2022年2月1日に掲載された情報となります。

ホクレン食品検査分析センター 食品流通研究課 課長補佐 吉田 慎一

POINT
●MAフィルムと電場処理技術を用い適切な温度管理を行うことで、メロンの品質を長期間保つことができます。

北海道内のメロン収穫は、10月下旬前後に終わりますが、近年、実需業者や観光・飲食業界から、端境期に当たるクリスマスやさっぽろ雪まつり時期への供給が求められています。それに対応するには収穫後、長期間の貯蔵が必要です。ホクレン農業総合研究所では、2018年度から2020年度にかけ、晩秋期に収穫されるメロンの長期貯蔵技術開発に取り組み、適切な貯蔵条件を明らかにしました。そのポイントと品質保持効果を紹介します。

日持ち性に優れる果実の条件とは

長期貯蔵するには、品種は「レッド-113」が最適で、打撲や傷が無く、1.6kg以上(共計8kg箱換算で4〜5玉入りサイズ)の果実を選ぶことが日持ち性の向上に適していると、2018年からの実証試験で分かりました。また、ツルを切除して貯蔵することで、カビの発生予防につながります。

長期貯蔵を可能にする二つの鮮度保持技術

① M‌Aフィルム
青果物は収穫後も呼吸しているため、それを抑えることが鮮度保持には重要です。

そこで、青果物の呼吸量に応じ、酸素や二酸化炭素濃度が調節されるよう設計されたM‌Aフィルムで被覆することで、メロンを眠ったような状態にして劣化を防ぐことができます。当技術ではStepac社製の「Xtend®」を使用します(写真1)。「Xtend®」には更に調湿機能も備わっており、カビの発生要因となる結露発生を抑えながら適度な湿度が保持されるため、より貯蔵に適した環境をつくれます。

MAフィルム「Xtend®」で梱包したメロン
写真1.MAフィルム「Xtend®」で梱包したメロン

② 電場処理
電場処理とは、青果物等に電場を与え電界環境を形成することで、青果物の鮮度を長く保持できる新たな手法です。当技術では、日栄インテック株式会社製の電場処理機「スーパークーリングシステム」(以下、SCS)を低温貯蔵庫内に設置して使用します(写真2)。

プレハブ低温貯蔵庫内に設置したSCSのパネル(写真下)
写真2.プレハブ低温貯蔵庫内に設置したSCSのパネル(写真下)

低温貯蔵庫の管理で留意すること

貯蔵庫の温度は1℃に設定します。0℃未満では低温障害が発生し、3℃以上では呼吸量が増大し追熟の進行が早まるので、温度管理が重要です。また、「Xtend®」には調湿機能が備わっていますが、それを過度に上回る湿度では結露が発生し、果皮に付着してカビの発生リスクが高まります。貯蔵中は過度な温湿度変化を避け、結露の発生を防ぐことも大切なポイントです。

二つの技術で高い品質保持効果

メロンは収穫後、追熟が進行して果肉が軟化すると果皮がクレーター状に凹み、その周囲からカビが発生し商品性を失います。「Xtend®」被覆のみでは1月中旬以降、急激に販売可能歩留まりが低下しますが(図1)、SCSを併用することで2月上旬の「さっぽろ雪まつり」頃まで高い歩留まりを維持できます(写真3)。

2020年11月3日に収穫したメロンの販売可能歩留まり推移
図1. 2020年11月3日に収穫したメロンの販売可能歩留まり推移
2021年2月3日に出庫した際の果実外観左:段ボールのみ 中:Xtend被覆 右:Xtend被覆+SCS
写真3. 2021年2月3日に出庫した際の果実外観 左:段ボールのみ 中:Xtend被覆 右:Xtend被覆+SCS

また、食味についてもSCS併用で、果肉軟化とアルコール感を抑えられます(表1)。なお、開封後、室温下で3日前後置くことで追熟が再開して「食べ頃」を迎えますが、以降は果皮の凹みなどの劣化が生じる可能性があります。食べるまで日数がある場合は、冷蔵庫の野菜室程度の低温下に保管することで、品質劣化を抑えられます。

表1. 2020年11月3日に収穫したメロンの食味官能評価 ※1.Xtend被覆を基準(0点)に±3点の尺度で程度の強弱を20名のパネルで評価した平均値 アルコール感と甘み:数値が高いほど強く、低いほど弱いことを示す 硬さ:数値が高いほど硬く、低いほど軟らかいことを示す *:Xtend被覆に対し、統計的に有意差があることを示す

当技術に関しては、食品流通研究課(電話011・742・5441)までお問い合わせください。