貯蔵

かぼちゃの貯蔵腐敗を減らす乾燥技術

この記事は2021年6月1日に掲載された情報となります。

道総研 中央農業試験場 病虫部 病害虫グループ 新村 昭憲(前 上川農業試験場 研究部 生産技術グループ)

道総研 中央農業試験場
病虫部 病害虫グループ 新村 昭憲
(前 上川農業試験場 研究部 生産技術グループ)

Profile:北海道名寄市生まれ。1990年帯広畜産大学卒業。民間企業等を経て1994年から試験場勤務。病害防除に関する研究を担当。

POINT
❶かぼちゃの「つる枯病」対策には、差圧通風乾燥が効果的です。
差圧通風乾燥は、温度の制御が重要で、室内温度15℃未満での通風は発病が増加します。

「つる枯病」対策に差圧通風を利用

かぼちゃは長期間貯蔵することが多く、貯蔵腐敗がしばしば問題となります。貯蔵腐敗の大きな原因は「つる枯病」で、栽培中の薬剤防除は可能ですが、十分ではありません。今回は収穫直後の風乾を差圧通風で実施し、「つる枯病」の発生を低減するための最適な条件を検証しました。

差圧通風(以降、通風)とは青果物の冷却などで利用されており、前後に穴の開いたダンボールの片面から空気を排出し、反対面から取り入れた空気を強制的に通す技術です。本試験ではかぼちゃのコンテナで同様の処理を実施しました。なお、試験は収穫直後の果実を7日間通風乾燥処理し、倉庫内で貯蔵後に発病調査を行いました。

室内温度15℃未満での差圧通風は発病増加

温度変化の少ない倉庫内と夜間低温になるハウス内で終日通風区と無処理区で比較しました。その結果、倉庫内では実施したすべての試験で通風によって発病が低減しました(表1)。この時、15℃未満の低温条件になった時間は0時間でした。方、ハウス内では2016年と2018年に通風によって発病が増加し、2019年は減少しています。これは、2016年と2018年は15℃未満の低温時間が47〜64時間と長く通風で発病を増加させた方で、2019年は15℃未満が25時間と少なく、30℃以上の時間が9時間あることで、低温の影響よりも高温での通風の効果が大きいと推察されました。15℃以上では通風によって発病を低下させ、15℃未満では増加させると考えられます。

倉庫内およびハウス内での差圧通風による発病低減効果
表1.倉庫内およびハウス内での差圧通風による発病低減効果

差圧通風時の室内温度は15℃以上

これまでの結果から、重要なのは倉庫やハウス内の温度による通風の制御と考えられ、低温時の通風を避けるため、15℃、20℃、25℃以上の温度の場合のみ通風を行うようにサーモスタット(温度調節装置)で制御しました。試験は白フィルムで遮光し常時開放した低温ハウスと、30℃以上で換気を行う高温ハウスとの2カ所で実施しました(図1)。低温ハウスでは15℃以上での通風区が最も発病が少なく、高温ハウスでも最も少ない常時通風区と同等でした。この結果から通風する条件をハウス内温度15℃以上に設定することであらゆる環境での通風に対応できると考えられます。

サーモスタットで制御した差圧通風の効果(9/8収穫)
図1.サーモスタットで制御した差圧通風の効果(9/8収穫)

できる対策から始めましょう

本成果では差圧通風を実施する温度条件を検証しましたが、般的には扇風機などで風を当てているケースが多いと思います。扇風機を利用している場合でも15℃未満の低温の風は悪影響があると考えられます。また、風乾場所や貯蔵場所の防湿対策(土間に古ビニールなどを敷くなど)も重要であるため、できる対策から始めることが重要です。

差圧通風装置を作ってみました!

差圧通風装置は、低コスト・短時間で制作できます。DIY感覚でぜひ作ってみましょう。作り方のポイントは、YouTube内の「ホクレンアグリポートチャンネル」をご覧ください。

差圧通風装置 製作工程
ホクレンアグリポートチャンネル「かぼちゃ差圧通風装置の作り方」 https://www.youtube.com/watch?v=rWx3K34h3Ho