物流

近赤外光処理による鮮度保持技術「iRフレッシュ」

近赤外光照射の様子
写真1. 近赤外光照射の様子
この記事は2020年12月1日に掲載された情報となります。

ホクレン食品検査分析センター 食品流通研究課 印南 亨哉

POINT
❶処理時間は1秒間なので、選果ラインに合わせて制御可能。
❷青果物に部分的に照射するだけで効果が発揮されます。

近赤外光の照射で鮮度保持する技術

青果物の鮮度保持には、冷蔵での管理やフィルム包装などが多いのですが、近赤外光の照射により鮮度を保持する技術が「i‌Rフレッシュ」です。

「i‌Rフレッシュ」で使うのは、テレビのリモコンなどにも使われている般的な光です。目に見える光(可視光)より波長の長い光(近赤外光)のうち、特定の波長を照射することで、青果物はその光刺激を、熱や乾燥のストレス刺激として受け取り、蒸散の抑制など身を守ろうと各種の抵抗反応が起こり鮮度保持につながるとされています。処理時間は1秒ほどで、青果物に部分的に光が当たれば効果があるとされているのが特徴です。

ホクレンでは、2019年から効果を検証するため、開発元である株式会社四国総合研究所と共同研究を進めています。その中から「ミニトマト」への効果を紹介します。

ミニトマトの鮮度保持に効果

①カビ抑制効果と保管時の品質を調査(2019年)

2019年は、カビの抑制効果を確認するため、健全なミニトマトに近赤外光を1秒照射後(写真1)、果実部分にメスで切り込みを入れ、腐敗したトマトから培養した雑多なカビを塗布。25℃で6日間保管し、カビの発生数を調べました。

その結果、近赤外光を照射しないものは、塗布した3日後には切り口に白カビが蔓延したのに対し、照射したミニトマトでは、白カビ発生率が35ポイント軽減されました(図1、2)。

カビ接種後のミニトマトの状況
図1.カビ接種後のミニトマトの状況
接種後のカビ発生率の推移
図2.接種後のカビ発生率の推移

また、ミニトマトを般的な包装用フィルムでパッキング後、3℃、10℃、15℃の冷蔵庫で3週間保管し、カビや裂果による腐敗果の発生率を調査したところ、照射したものは2週目まで外観の劣化による腐敗果が抑制されました(図3)。

保管試験における腐敗果発生率
図3.保管試験における腐敗果発生率 ※腐敗果にはカビの他、裂果など含む。 *は未処理と5%水準で有意差があることを示す。

②入庫から店頭陳列以降も想定し調査(2020年)

2020年は、再現性の確認と現場の状況に近い条件で鮮度保持効果を調べるため、ミニトマトが入庫され店頭陳列用にパッキングされるまでの保管期間(4℃・7日間)の状況を調査。更にその中から健全なサンプルを選び、店頭での陳列期間を想定した日持ち保管(15℃・21日間)における品質を調査しました。また、合わせて照射回数を2回に増やした時の効果も調べました。

ミニトマトの保管期間における正常果の割合は、照射したものは未処理のものに対し4.9ポイント高く(図4)、特に裂果やヘタ落ちが抑制されました。

ミニトマト入庫後の保管(7日目)での正常果率
図4.ミニトマト入庫後の保管(7日目)での正常果率 ※照射1回区は、入庫直後に1回だけ照射。

日持ち保管での調査でも、照射1回で未処理より14日後まで正常化率が高くなりました。しかし、照射2回では軟化やしぼみが多く発生、未処理より正常果率が低くなり、照射回数などの条件には最適な範囲があると考えられました(図5)。

パッキング後の日持ち保管時における正常果率の推移
図5.パッキング後の日持ち保管時における正常果率の推移 ※照射2回区は、入庫直後に加えてパッキングの直前にも照射。

現在、道内J‌Aと連携し、ミニトマト以外でもかぼちゃの貯蔵試験や海外への輸送試験、人参の道外輸送試験に取り組んでいます。今回の結果はもちろん、その他の品目についても食品流通研究課まで、ぜひお問い合わせください。