この記事は2020年8月1日に掲載された情報となります。
ホクレン食品検査分析センター 食品流通研究課 印南 亨哉
POINT
❶ブロッコリー、スイートコーン、アスパラガスの輸送に「MA包装フィルム(以下、MAフィルム)」を利用できる適切な輸送条件が明らかになりました。
❷MAフィルムの利用により、物流経費の削減、食味の保持を実現しました。
「おいしさ」を保つ輸送温度条件を解明
青果物は収穫後も呼吸しているため、それを抑えることが鮮度保持には重要です。MAフィルムは、青果物の呼吸量に応じ、酸素や二酸化炭素濃度が調節されるよう設計されており、青果物を眠ったような状態にして劣化を防ぐことができます。しかし、入れるだけでOKの「魔法の袋」ではなく温度管理が大切です。そこで、MAフィルム輸送に適した温度条件を道総研花・野菜技術センターとの共同研究で明らかにし、利用指針として策定しました(図1)。
各品目輸送の具体的な利用効果
①ブロッコリーでの経済効果
MAフィルムは発泡箱と比べ安価なほか(表1)、砕氷が不要なため、製氷機の導入が難しい産地での活用が期待されています。一方、既に製氷機が導入されている産地では、製氷作業が追い付かない最盛期での代替利用に有効です。更に、MAフィルムは砕氷を使用しないため、箱の軽量化による荷役負担の軽減や、輸送中に融けた水の媒介による軟腐病の感染拡大低減も期待できます。また、段ボールは発泡箱に比べて内壁が薄い分、積載効率も向上します(写真1)。
②アスパラガスでの経済効果
「保冷剤入り発泡箱」に比べ包材費が低減するほか(表2)、アスパラガスと保冷剤との接触がなくなるため、冷凍焼けによる商品ロスを削減できます。また、発泡箱を使用しないため、倉庫での保管面積を削減でき、作業動線の確保につながります。販売先では箱の廃棄費用が減少するなど、副次的なメリットも期待できます。
③スイートコーンでの食味保持効果
着荷地での詳細な品質評価試験を行った結果(図2)、外皮のみずみずしさと甘くてジューシーな食味を保持した、「もぎたて」に近い商品を道外の消費地へお届けできることを確認しました。
短期貯蔵ツールとしての利用も
また、通常の輸送に加え、気象災害等による物流網の停止時や端境期の取引相場高騰時まで出荷期間を延長したい場面において、短期的な「貯蔵ツール」としての活用も期待できます。
現在、秋穫れメロンの長期保管やスイートコーンのネット通販対応への利用も進めています。当技術に関しては、最寄りのホクレン支所資材担当課または食品流通研究課(電話 011-742-5411)までお問い合わせください。