カテゴリー:生産振興
実施年度:2017~2020年度
実施:札幌支所営農支援室
対象JA:JA北いしかり
協力関係機関:石狩農業改良普及センター石狩北部支所
POINT
●「作付け前診断による圃場選定」の導入で、発病リスクを低減
●ブロッコリーの作付けが大幅に拡大
この記事は2021年8月1日に掲載された情報となります。
被害拡大が懸念される「根こぶ病」
JA北いしかり管内では、安定した需要があるキャベツやブロッコリーの作付けが増えています。しかし、一部の圃場では、アブラナ科野菜の土壌病害「根こぶ病」の発生が見られます(写真1)。この病害は、根部にこぶ症状が現れて養水分吸収が阻害され、生産性や品質が大きく低下します。管内には本病が発生しやすい酸性圃場も多く、更なる被害拡大が懸念されていました。
対策には、輪作体系の整備や酸度矯正による中長期的な取り組みが基本ですが、一方で当面の生産性確保に向けた対応も求められていました(表1)。
「作付け前診断による圃場選定」をマニュアル化
このような中、新たな対策として、「根こぶ病菌密度診断サービス」(ベジタリア株式会社提供)※を利用した「作付け前診断による圃場選定」の精度確認に取り組みました(図1)。
土壌採取は生産者自らが実施。診断結果は、2〜3週間で返送され、菌密度と土壌pHのほか、結果に基づく対処方法(耕種的防除、薬剤防除、作目変更)も記載されています。アブラナ科野菜を作付け予定の圃場を診断したところ、全体的に菌密度は低かったものの、一部高密度圃場も散見されました(表2内の赤字)。
2018年に「高密度」と判定された圃場で作付けしたキャベツでは、大半の株が根こぶ病に罹病。一方、無検出の圃場では、ほぼ発生が見られず、診断の精度が高いことを確認しました。これらをもとに「アブラナ科作物根こぶ病の土壌菌密度診断取り進めマニュアル」を作成(図2)。診断依頼から土壌採取、結果解析にわたる一連の流れの要点や注意点を記載し、生産部会総会などを通じ、周知しました。
※株式会社ニッポンジーン マテリアルが行う遺伝子解析を用い土壌中に含まれる根こぶ病菌休眠胞子の菌密度を測定するサービス。
作付けを拡大し、需要に応える
JA北いしかりでは、発症程度に応じた土壌改良や輪作などの対策を補完する形で、「作付け前診断による圃場選定」を導入しました。以降、根こぶ病の被害拡大抑制の一助となっています。
これらの取り組みにより、ブロッコリーの作付けは、20ha程度だったものが、2018年度には35ha、2019年度には42ha、2020年には49haと需要に応じた作付け拡大が実現しました(図3)。更なる需要に応えるため、2021年度以降も土壌診断を実施し、必要な対応を行うことで安定供給を目指しています。