2022年のポイント!
1 気候変動に対応した栽培技術の構築を
2 新しい技術やシステムの導入で課題を解決
3 【新技術】「うぃずOne」を用いた大玉トマトの2本仕立て栽培法
4 労働力不足や出荷調整は新技術で克服
5 気候変動に備えたリスク対策を
6 【新技術】おうとうの新品種候補「HC10」が登場
この記事は2022年4月1日に掲載された情報となります。
北海道農政部 生産振興局
技術普及課 主査
浅田 洋平さん
【野菜】
ポイント1
気候変動に対応した栽培技術の構築を
昨年の気象経過を異常年と捉えるのではなく、平常化した場合を想定した対策を考えてください。具体例としては①施設栽培における暑熱対策(寒冷紗、屋根散水、細霧冷房)を含めた環境モニタリングおよび環境制御技術の導入(写真1)、②露地栽培における潅水設備や地下潅水の整備・活用、③土壌透排水性改善(土づくり)などです。今後ますます気候変動(特に高温対策)に対応した栽培技術の構築が求められるようになるでしょう。
ポイント2
新しい技術やシステムの導入で課題を解決
生産現場では高齢化や担い手不足、農家戸数減少が問題となっています。この局面を打開する有効な手段として、スマート農業技術(自動換気装置、自動潅水装置、自動操舵システム、出荷予測システム等)の活用、GAP(農業生産工程管理)の実践などを検討してください。
ポイント3【新技術】
「うぃずOne」を用いた大玉トマトの2本仕立て栽培法
養液栽培システム「うぃずOne」を用いた大玉トマトの夏秋どり2本仕立て栽培法が確立されました(図1)。裂果しにくい品種「麗月(れいげつ)」を選び、給液量を1本仕立て法の2倍にすることで尻腐果が減少(図2)。1本仕立てと同等以上の収量・品質を維持しつつ、栽培槽と育苗数を半減できます。
【花き】
ポイント4
労働力不足や出荷調整は新技術で克服
花き栽培では近年、省力化を目的に自動換気装置や自動潅水装置が導入され始めています。労働力確保が難しい中、1戸当たりの栽培面積を維持するために、こうした設備の導入を検討してください。
また、北海道も冷涼な気象条件ではなくなりつつあることから、花きの品質の低下や、出荷時期が本来の予定日より前倒しになる問題が発生しています。現在、良品質花きの生産を目的として、生育に効果的な光の波長を組み合わせた電照技術やEOD(end of day)加温、CO2施用、環境モニタリング(写真2)など、総合環境制御技術が研究されており、期待が高まっています。
【果樹】
ポイント5
気候変動に備えたリスク対策を
近年、気候変動による気象災害(雪害、凍害、霜害等)が頻発しており、一部品目では収量・品質に影響が見られます。樹種・台木・品種の組み合わせの見直しや、防風施設など物理的な対策、保険などセーフティネットへの加入を検討してください。リスク対策を講じて、今後も道産のおいしい果物づくりに努めましょう。
ポイント6【新品種】
おうとうの新品種候補「HC10」が登場
「南陽」と比べて大玉で、食味に優れる新品種「HC10」が誕生しました(写真3)。「HC10」の特徴として、果皮の着色の良さ、果肉の硬さ、糖度の高さが挙げられます。「佐藤錦」をはじめ、ほとんどの栽培品種と交雑和合性があり、他品種の結実にも貢献できます。今後「南陽」との置き換えが見込まれています。