2024年 営農のポイント 園芸

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この記事は2024年4月1日に掲載された情報となります。

北海道農政部生産振興局成松靖さん

北海道農政部生産振興局技術普及課
普及指導員グループ 総括普及指導員
(農業革新支援専門員) 成松 靖さん

 

ポイント
❶野菜は高温対策と土壌環境の改善、肥料コスト低減
❷果樹は病害虫・鳥害対策、樹体管理で着果量を調整
❸花きは高温対策による生理障害対策、省エネ対策を
【新技術】堆肥入り複合肥料の特性と活用法
【新技術】デルフィニウムうどんこ病の省力的防除法

 

ポイント❶
野菜は高温対策と土壌環境の改善、肥料コスト低減

高温対策として、地域の栽培条件に見合う品種選定が必要になってきました。

遮光・遮熱フィルムの活用や塗布剤による遮熱と、循環扇による換気をうまく組み合わせることも有効です。日射による蒸散を含めて潅水量を自動制御できる省力化技術も出ていますので、導入を検討しましょう(写真1)。

写真1.潅水の自動化事例(檜山農業改良普及センター)
写真1.潅水の自動化事例(檜山農業改良普及センター)

土壌環境の改善は、堆肥や緑肥による地力増進、保水性を高める土づくりを計画的に行います。集中豪雨対策は、地表排水と地下排水を組み合わせ、圃場条件に合う施工技術で排水性を高めます(写真2)。

写真2.ハウス間の簡易排水溝による地表排水。明きょにつなげ排水性を高める
写真2.ハウス間の簡易排水溝による地表排水。明きょにつなげ排水性を高める

施肥は、土壌診断に基づいて微量要素を含めた養分バランスの適正化を図り、前作物のや堆肥、緑肥など有機物を活用して化学肥料の使用を減らし、コストを低減しましょう。

ポイント❷
果樹は病害虫・鳥害対策、樹体管理で着果量を調整

近年の気候の影響により、リンゴ炭疽病やブドウ晩腐病などが増加しています。りんごは春の初期防除が重点でしたが、今後は本州の防除を参考に夏の病害も含めた薬剤選択、防除間隔などの検討が必要になります。

北海道病害虫防除所HPでは、「病害虫発生予察情報」を出しているので参考にしてください。昨年は日焼け果の発生も多く見られました(写真3)。果実を守るには適度に葉を残すことも必要なので、バランスを見て摘葉します。

写真3.日焼けしたりんご
写真3.日焼けしたりんご

野鳥の被害も増加しており、爆音機、音声、防鳥テープ、鷹カイトなど短期的に効果がある対策と共に、防鳥ネットによる遮断が最も効果が高い方法となります。果樹を安定生産するには、樹勢コントロール、早期適正着果、適期収穫など基本的な栽培管理が効果的です。

ポイント❸
花きは高温対策による生理障害対策、省エネ対策を

昨年は高温により草丈が短いうちに開花してしまい、切り花長の伸長不足が散見されました。

また、生育が早まり、需要期とのズレも見られました。遮光ネットや循環扇だけでは暑熱対策の効果が十分得られない地域も多く見られました。遮熱剤の併用(写真4・5)や気化熱利用による温度低下技術の導入も検討ください。

写真4.塗布時の遮熱剤の調整
写真4.塗布時の遮熱剤の調整

 

写真5.ハウスへ遮熱剤の塗布
写真5.ハウスへ遮熱剤の塗布

また、燃料価格の上昇に伴い、特に冬季間の温度管理における省エネ対策が重要です。近年、保温性が期待でき、自主施工できる空気膜2重構造ハウスの導入が増えつつあります(写真6)。

写真6.空気膜2重構造ハウス(膨らんだ天井ビニール)
写真6.空気膜2重構造ハウス(膨らんだ天井ビニール)

ハウスの破損により熱が逃げないよう細かいメンテナンスを施すことで、保温性が維持でき省エネ対策になります。

ポイント❹【新技術】
堆肥入り複合肥料の特性と活用法

肥料取締法改正で販売可能となった堆肥入り複合肥料(写真7)は、堆肥と化学肥料を㆒度に施用できるため省力的です。

写真7.堆肥入り複合肥料
写真7.堆肥入り複合肥料

有機物由来窒素を30〜40%含有し、その内、C/N比が概ね15以下の牛・豚ふん堆肥由来の窒素の配合割合が20%以下の肥料です。施用後は、速やかに窒素を放出するのが特徴でYES!clean栽培にも活用できます。

トマト、ほうれんそう、キャベツに施用できますが、玉ねぎなどではハエ類の被害が懸念されるため、散布後は速やかに混和する必要があります。本州では既に市販されており、北海道でも今後導入される予定です。

ポイント❺【新技術】
デルフィニウムうどんこ病の省力的防除法

うどんこ病はデルフィニウム生産の最重要病害で、栽培期間は毎週の薬剤散布が必要ですが、出荷前の散布は薬斑が発生するため外観品質の点で問題となっていました。

紫外光(UV–B)の照射と薬剤散布の組み合わせにより、薬剤散布回数を慣行の半分以下としながら出荷率を維持できます。紫外線を出す電球を夜間に当てるだけで省力的に防除でき、電球の導入コストも1〜2年で回収できます。