この記事は2019年6月1日に掲載された情報となります。
北海道農政部の調査によると、昨年は9月の台風により全道で6,000棟を超える農業用ハウスに被害が発生しました。突風や強風による被害を最小限に抑えるためには、日頃の管理が肝心。自分でできる対策をご紹介します。
ホクレン資材事業本部
施設資材部 資材課
課長補佐 髙橋 雄亮さん
災害に備えて、ハウスの点検を
昨年9月の台風21号では、空知や石狩管内を中心に農業用ハウスに大きな被害が出ました。フィルムがはがれて飛ばされたり、風が吹き込んでハウスが倒壊したケースもありました。
こうした被害を最小限に抑えるためには、気象情報のチェックはもちろん、日頃からハウスのまわりを片付けておくなど、周辺の整備が欠かせません。
また、パイプのジョイント部材に緩みがないか、フィルムがたるんだり破けていないかなど点検しておくことも大事です。パイプの下が錆びて強度が弱くなっていたり、ハウスバンドの杭が緩んでいないかも確認しましょう。
日頃の点検に加え、ハウスの補強も検討してください。タイバー、筋交い、支柱など、さまざまな方法があります。ただし、タイバーや支柱は機械作業の邪魔になる場合もあるので、状況に応じた選択をJAの資材課などにご相談ください。
タイバー
パイプハウスの上部に取り付ける補強用資材。X字型、逆T字型などの種類がある。特に上からの(積雪)加重に対して効果がある。
筋交い(すじかい)
パイプにクロスさせるように斜めに設置する。簡易的な補強として有効。出入口付近には筋交いがあっても、ハウスの中央部分には設置されていないことも。
ダブルアーチ
数メートルおきにアーチパイプを二重構造にする。既存ハウスの内側に骨材を組み入れて二重にするだけで、上からはもちろん、横からの加重にも強くなる。
方杖(ほうづえ)
ハウスの隅の部分の内側に短い斜材を入れて補強する。天井の高さが低くなり、作業しにくくなる場合もある。
支柱(中柱)
ハウスの中央部に柱を設置する。トラクター作業の邪魔にならないよう取り外しできるタイプもある。積雪対策には有効だが、横からの風には強くない。
フィルムを切ってパイプを守る判断も
農POフィルムは強度があるので、強い風を受けてもなかなか破れません。
そのため、パイプのほうが負けて曲がってしまったり、風が吹き込んでハウスが持ち上がってしまったケースもありました。ハウスが倒壊するほどの強い風になりそうな場合は、自らフィルムを切ってパイプを守る判断も求められます。
判断は難しいですが、パイプがダメージを受けるより、フィルムの張り替えですむほうが被害額が少なく済みます。なお、その際は必ず風下側からフィルムを切るようにしてください。
系統独自の「災害見舞金制度」
系統のクリンテートシリーズ、JAノービシリーズのハウスフイルムには「災害見舞金制度」があります。製造元の出荷から1年以内の製品が被災により破損した場合、または災害の緊急回避のためにフィルムを切った場合に、購入金額の一部を補填する制度です。
昨年の台風被害では270件、300枚以上、災害見舞金の総額は一千万円以上となっています。対象は天井フィルムのみですが、こうした支援策もありますのでご活用ください。
最後に、悪天候の日はハウスが気になると思いますが、強風のさなかに屋外での作業は非常に危険です。くれぐれも無理をされないようお願いします。
ハウスの被災を防ぐポイント
□気象情報・注意報を常にチェックしていますか?
□ハウス周辺に風で飛ばされそうなものを置いてませんか?
□フィルムにたるみや破れ、風が吹き込む隙間はありませんか?
□ハウスバンドや被覆材の留め金具に緩みはありませんか?
□筋交いの留め金具に緩みはありませんか?
□基礎や接続部分に腐食やサビはありませんか?
□ハウス出入り口の補強や戸締りはしましたか?
□作業を終えたハウスはフィルムを外していますか?