さつまいもの栽培試験

キーワード:さつまいもシルクスイートベニアズマべにはるか
図1.取り組み成果集2022のさつまいもの試験
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この記事は2023年10月13日に掲載された情報となります。

カテゴリー:実証試験
実施年度:2021〜2023年度
対象:JA伊達市
実施:苫小牧支所営農支援室
協力関係機関:胆振農業改良普及センター、伊達市経済環境部農務課

 

POINT
●2021年度で明らかになった歩留まりと品質の問題は改善傾向にある
●販路拡大に向けて量販店や海外へ試験的に出荷

 

2021年度の実証試験を踏まえて

JA伊達市のさつまいもの栽培試験は、2021年度にスタート。その内容については、取り組み成果集2022「START UP!」に掲載しました(図1)。

2021年度はJAの試験圃場で約3000本の苗を定植し実証試験を実施。収穫量は多かったものの収穫時のキズや折れ、巨大塊根の発生による正品率の低下やハリガネムシの食害などが発生しました。

2022年度は定植予定圃場の土壌分析結果に基づき施肥を行いました。そして、前年の収穫物で害虫による食害痕が認められたことから、殺虫剤の土壌混和を実施。定植後1カ月を目安に1回目の生育調査(地上部)、3カ月を目安に2回目の生育調査(地下部)、JA試験圃において収量調査も行いました。

採苗試験を実施

※採苗については、品種開発先と許諾契約を締結したうえで取り進めています

2022年3月より種苗コスト低減と良質苗を確保するため、自家採苗の検証に取り組み、「伏せ込み採苗法」(写真1)および「ウイルスフリーポット苗採苗法」試験(写真2)を実施しました。

写真1.塊根伏せ込み採苗法試験
写真1.塊根伏せ込み採苗法試験
写真2.ウイルスフリーポット苗採苗法試験
写真2.ウイルスフリーポット苗採苗法試験

採苗の試験は、苗床の土壌環境に影響を受けず、採苗時の労力軽減効果が見込まれる隔離床方式により実施。定植時期に合わせて一斉に収穫しました。その結果、どちらの方法でも苗を生産できることが分かりました(表1・2)。

表1.塊根伏せ込み採苗法試験結果
表1.塊根伏せ込み採苗法試験結果
表2.ウイルスフリーポット苗採苗法試験結果
表2.ウイルスフリーポット苗採苗法試験結果

2022年度は降水量が極端に多かったことが影響し、収量は2021年産を下回りました(表3)。しかし、芋数が確保され巨大塊根の発生が少なかったため、結果的に規格内収量は昨年より改善する傾向が見られました。

表3. JA試験圃場収量調査結果
表3. JA試験圃場収量調査結果

品質調査や貯蔵試験と販路拡大

ホクレン食品流通研究課では、蒸し芋と焼き芋の成分分析と官能評価を実施。JA伊達市産「ベニアズマ」の食味は、期間を通して粘質で、甘味は10月よりも12月で強くなり、2月にやや弱まる傾向が見られました。「べにはるか」の甘味は10月より12月で強くなり、2月は12月とおおむね同等でした(表4)。

表4.2022年JA伊達市産2品種官能評価結果(抜粋)
表4.2022年JA伊達市産2品種官能評価結果(抜粋)

貯蔵試験では、「ベニアズマ」「べにはるか」ともにキュアリングにより重量減耗は抑制できる可能性が高いと思われました(図1)。

図1.重量減耗率
図1.重量減耗率

販路開拓において、2021年度は、ホクレン園芸開発課経由で 道内大手スーパーの「コープさっぽろ」と「イオン北海道」のバイヤーへ サンプルを供試。2022年度は、園芸開発課に加えホクレン野菜果実花き課経由で「大規模かんしょ輸出確立実証事業」向けに出荷しました。

2023年度は産地化に向けて更なる改善を進める

2023年度は、生産者4名による採苗と生産者12名(14圃場)面積2.6haの実栽培を計画しています。これまでの試験栽培を通して得られたデータや分析結果に基づき、生産者へ情報提供を実施し、これまでの課題に対する改善策の効果を確認するとともに、新たに見つかった課題の改善策を検証します。

更に、将来の生産規模拡大と省力化に向け、作業機械の導入と生産者へのレンタル事業を開始しています(写真3)。

写真3.専用収穫機
写真3.専用収穫機

また、販売面においては、種苗園芸部、食品部、生活部とホクレン内部で連携し、JA伊達市産さつまいもの販売ルートを確保することで、高品質安定生産体制の確立を目指します。

行政や関係機関とも連携し、北海道産さつまいもの生産振興を目指して情報の共有を図っていきます。