輸送環境変化に対応した原料てん菜の中継輸送

キーワード:てん菜トラック輸送物流輸送

大空町女満別開陽にある女満別貯蔵場
ホクレン中斜里製糖工場では、原料のてん菜をオホーツクと根釧の広範囲から集めています。輸送に使用する車両確保がより厳しくなることが予想される中、圃場と工場の間に中間貯蔵場を設けることで問題の改善に取り組んでいます。

 

この記事は2023年12月4日に掲載された情報となります。

ホクレン てん菜生産部 原料課 課長代理 伊藤 千明

ホクレン てん菜生産部
原料課 課長代理 伊藤 千明

 

将来を見据え、2020年に女満別貯蔵場の運用を開始

ホクレン中斜里製糖工場(斜里町)では、原料となるてん菜を年間約90万t受け入れています。

集荷範囲は網走市・大空町(女満別)・清里町・斜里町・小清水町・中標津町・弟子屈町の1市6町にわたり、1100戸以上の生産者の圃場から輸送しています。

これまで、網走貯蔵場に貯蔵されるもの(約12万t)以外のてん菜は、工場や工場近郊の貯蔵場まで運ばれていました。輸送最盛期には、1日当たり2万t強のてん菜を運ぶ必要があり、圃場も広範囲にわたるため、多くの輸送車両(ダンプ)が必要で、その確保が年々難しくなっていました。

中でも、女満別周辺からの輸送は、工場から約40㎞以上離れていることから、車両回転率が上がらず、多くの台数を必要としていました。

そこで、圃場と工場との間の女満別に、新たな中間貯蔵場を設置し、そこに周辺のてん菜(約6万t)を運んで一時貯蔵した後に工場へ輸送する、「中継輸送」を行うことで車両回転率を上げ、輸送最盛期の必要台数を減らす取り組みを2020年から始めています(図1、写真1)。

 

図1女満別貯蔵場設置による輸送効率化(イメージ)
図1.女満別貯蔵場設置による輸送効率化(イメージ)

 

写真1大空町女満別開陽にある「女満別貯蔵場」。工場から遠方の女満別周辺の圃場から原料用てん菜を受け入れ、除土積み上げ機(パイラー)で堆積、一時貯蔵している。
写真1.大空町女満別開陽にある「女満別貯蔵場」。工場から遠方の女満別周辺の圃場から原料用てん菜を受け入れ、除土積み上げ機(パイラー)で堆積、一時貯蔵している。

 

中継輸送で必要台数を削減

「車両確保は年々厳しくなっています。管内だけでなく、管外各地から輸送車両が調達されていますが、それでも難しい状況にあります。女満別に一時貯蔵するコストはかかりますが、将来的に車両不足で輸送できない状況が危惧されることから、それを少しでも緩和するため、この取り組みを始めました」と伊藤課長代理は話します。

この取り組みで、輸送最盛期の10月から11月中旬に、以前は中斜里製糖工場全体で1日当たり約260台の車両が必要でしたが、12%ほど少ない約230台に削減できました。

また、女満別貯蔵場から工場への輸送を最盛期後の12月下旬から春まで行うことで、繁閑差の緩和にもつながっています。なお、ホクレンでは同様の取り組みとして、2022年に士幌町にも貯蔵場を開設しています。

これからも安定した輸送を続けるために

この先、トラックドライバー不足など、車両確保はますます厳しくなることが予想されています。

中斜里製糖工場では、ドライバー1人当たりの輸送量を増やすための車両大型化推進や、これまで荷下ろしできなかった車種に対応した施設改修などの取り組みを進めています。

また、圃場からの集荷が効率良く行えるよう、関係機関が協力して原料の受け渡しに関するパンフレットを作成し、生産者に集荷ルールの徹底などの協力を呼び掛けています。

伊藤課長代理は言います。

「農家の皆さんが安心して、てん菜を生産できるよう、これからも皆で協力して物流の効率化などに取り組んでいきたいです」

引き続き安定した輸送が行えるよう、生産者、JA、糖業者、輸送会社、そして、国や自治体などが連携協力した取り組みが重要になります。

 

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