シン道産品 さつまいも JA伊達市が挑戦中!

さつまいもの産地化を目指して

キーワード:さつまいも伊達市

 

さつまいもの産地化を目指して

振興作物で特産品をつくろうと、2021年度からさつまいもの産地化に向けた取り組みをスタートさせたJA伊達市。2年間の実証試験と今後の展望について、営農生産部の高橋さんに聞きました。

この記事は2022年12月1日に掲載された情報となります。

伊達市農業協同組合 営農生産部 部長 高橋 勝幸さん

伊達市農業協同組合 営農生産部
部長 高橋 勝幸さん

土地柄を生かせるさつまいもに注目

四季を通して温暖な気候の伊達市は、ブロッコリーやキャベツ・トマト・レタス・長ねぎ・ほうれんそう・かぼちゃなど野菜の生産が盛んです。しかし、メインとなる品目が少ないという課題がありました。

JA伊達市として温暖な気候を生かせる新規の振興作物を模索していたところ、道外の取り扱い業者がさつまいもの生産拡大を望んでいるという情報もあり、行政を含めた関係各署と連携して実証試験に取り組むことを決めました。

初年度の2021年は高橋さんご自身の実家の圃場で、およそ10aの面積にベニアズマ、シルクスイート、べにはるかの3品種を合わせて3000本ほど作付け。栽培から貯蔵に至るまでの課題を抽出することにしました。

2022年産さつまいも。干し芋などへの加工も試しながら販売先の反応を探っていく。
写真1. 2022年産さつまいも。干し芋などへの加工も試しながら販売先の反応を探っていく。

2年目は試作圃を拡大

1年目は無農薬での栽培を試みましたが、思った以上に収量は多く、シルクスイートとベニアズマは10a当たり3tほど、べにはるかは2.5tほどの実績をあげられました。方で、収穫時の傷や折れ、ハリガネムシの食害など課題も確認。

そこで2年目の2022年は試験圃を拡大するため、生産者に協力を依頼。地区ごとに6カ所の試作圃を新たに設け、それぞれ10aずつ合計70aで栽培してみることにしました。

取材に伺った10月17日はまだ収穫中でしたが、高橋さんによると「収量は前年より減少しそう」とのこと。今後、天候の影響や地区ごとの土質の違いも含めて検証する予定です。

「さつまいもは防除しなくてもいいと聞いていましたが、昨年は土の中で虫食いがあったり、茎葉に食害があったりしました。病気は見当たりませんでしたが、定植前や定植後はやはり防除が必要だと思います」と高橋さん。「畝間が雑草だらけになると養分が奪われるし、光合成も阻害されるので、さつまいもの葉が畝間を覆う8月くらいまでは雑草の処理が欠かせません」と、2年間の栽培で実感したことを教えてくれました。

2022年試験圃。新品種「ゆきこまち」も含めて、今後、品種の絞り込みも検討していく予定。
写真2. 2022年試験圃。新品種「ゆきこまち」も含めて、今後、品種の絞り込みも検討していく予定。

作業機械を貸し出し

JA伊達市では「畝をつくる機械」「蔓を切る機械」「収穫機」を1台ずつ導入し、生産者に貸し出したほか、JA所有の施設にエアコンを増設して適温貯蔵できるよう改修しました。

来年度は、生産者に2年間の試験結果を公表したうえで作付け希望者を募り、作付面積の拡大をしていく計画です。

「目指すのは農家所得の向上です。目標は10a当たり30万円。肥料を含めた生産資材が高騰しているので、防除回数が少なくコストを抑えられるという点で、さつまいもは有望だと思います。ただし、定植と収穫は労働力を要するので、そこを機械化などでいかに軽減していくかが課題ですね」

実証試験のデータに生産者の知識と経験をプラスし、地域に合った栽培技術の確立を目指しています。

ハウスの中で簡易キュアリング処理(2021年度)
写真3. ハウスの中で簡易キュアリング処理(2021年度)

産地化に向けた課題

産地化に向けた課題はほかにもあります。つは苗の問題。

「今年度は前年に収穫したものを種芋用に保存して育苗したほか、不足分はウイルスフリーの苗を購入しました。しかし、苗の入荷日がはっきりしないなどの問題があり、やはり自前で苗を仕立てるのが理想的です」と高橋さん。

気温の低い北海道での育苗は燃料費がかかるため、買い苗との価格差をどの程度抑えられるかも含めて実証が必要です。また、将来的にはキュアリング用の施設や、選果、貯蔵施設も考えなければなりません。

JA伊達市では最終的な目標を「栽培面積100ha、販売金額3億円」と掲げています。

「北海道を代表するさつまいも産地になりたいですね。国内有数のさつまいも主産地である茨城県の〈J‌Aなめがたしおさい〉さんのように、さつまいものブランド化を目指したいです」

始まったばかりのJA伊達市の取り組み。ハードルをつひとつクリアし、生産拡大を図っていきます。