透排水性・土壌物理性改善の取り組み

カットブレーカー施工の様子
写真1. カットブレーカー施工の様子

カテゴリー:生産振興
実施年度:2020~2022年度
対象:北海道内の9JA
実施:函館・倶知安・札幌・岩見沢・留萌・旭川・稚内支所営農支援室
協力関係機関:農研機構、全道の農業改良普及センター、株式会社北海コーキ

POINT
●カットブレーカーなどの施工による透排水性・土壌物理性の改善

●2020年度の岩見沢の事例報告

この記事は2022年11月1日に掲載された情報となります。

気候変動等にも対応可能な土壌づくりのために

近年、北海道でも豪雨や長雨に見舞われることが増え、畑作物の減収リスクが高まっています。

土が硬く締まっていると圃場に水が滞留するなど作物の生育に大切な根の成長に影響を及ぼすため、圃場の透排水性など、土壌物理性を改善することが重要です。

圃場の改善対策には、暗きょや心土破砕などの基盤整備がありますが、経済性などから生産者自身で実施でき、多様な土壌条件に対応できる排水改良用施工機の開発が必要とされてきました。

土壌に合わせた透排水性の改善

農研機構と株式会社北海コーキが開発した全層心土破砕機「カットシリーズ」は、①資材準備が不要、②従来の補助暗きょ技術より深層まで改良可能、③適用可能な土壌条件の拡大という特長があり、ほぼ全ての土壌に対して排水改良ができます(写真1・図1)。

排水改良ラインアップ「カットシリーズ」の概要
図1. 排水改良ラインアップ「カットシリーズ」の概要

「カットシリーズ」は、土の硬さや土性に合わせた工法を使い分けることができます。土壌条件に適したパーツをトラクターなどにセットし、無資材での心土破砕や暗きょ構築まで対応可能です。現在、全道各地において作物や施工時期が異なる圃場での実証試験を行っています。

岩見沢の玉ねぎ圃場での試験

2021年度は、全道5地区でカットブレーカー、3地区でカットドレーンによる施工を行いましたが、干ばつ基調で作物への効果は判然としませんでした。そこで2020年と2021年のJAいわみざわ管内の玉ねぎ生産者圃場での実証試験について、土壌物理性改善効果を中心にご紹介します。

ひとつめの試験は2020年の春に実施しました。地下15〜25cmに耕盤層と考えられる緻密な層がある圃場において、慣行区ではサブソイラとパラソイラーを用いて地下40cm程度、試験区ではカットブレーカーで地下45cm以降までの心土破砕を施工しました(写真2・図2)。

心土破砕施工後の土壌断面
写真2. 心土破砕施工後の土壌断面
カットブレーカーの施工原理
図2. カットブレーカーの施工原理

それにより、図3の通り、土壌の耕盤層が破壊され、土壌物理性の改善効果が見られました。

試験区では、この効果は玉ねぎの収穫後まで継続していました。作物の収量は、試験区で大玉傾向であり、総収量で慣行比125%となりました。これについては、単年度1圃場の結果であり、事例を積み重ねて検討する必要があります。

2020年の秋に施工した試験では、施工後の前述の圃場と同様に土壌が膨軟になりました。融雪後、土壌硬度を調査したところ、冬期間の雪の重みによりやや硬くなっていたものの心土破砕効果が維持されていました。秋施工により春作業の軽減が可能となると思われます。

土壌断面の土壌硬度(山中式硬度計)
図3. 土壌断面の土壌硬度(山中式硬度計) ※図中の破線部は20kg/㎠を超える硬い層を表している

今後の取り進め

2022年度も全道5地区でカットブレーカー施工による生産性・収量向上効果や多湿由来病害の軽減効果について実証試験を行っています。

また、1地区では、牧草地におけるカットドレーンの有効な施工時期(春・秋)の検討や植生維持効果について検証を行っています。

これらの試験結果から良好な事例について今後も継続して紹介します。