加工用人参「カーソン」の作付産地事例

「カーソン」に関する問い合わせ先種子:ホクレン種苗課 syubyou@hokuren.jp 栽培技術:ホクレン園芸作物開発課 engeisakumotu@hokuren.jp
「カーソン」に関する問い合わせ先 種子:ホクレン種苗課 syubyou@hokuren.jp 栽培技術:ホクレン園芸作物開発課 engeisakumotu@hokuren.jp

人参の収穫にポテトハーベスターを使用!?加工用人参「カーソン」をいち早く導入し、生産者や加工施設と連携して取り組んでいるJA士幌町の事例を紹介します。

この記事は2021年12月1日に掲載された情報となります。

JA士幌町 農産部 農産課

宮島 彩夏さん(右) 得能 信さん(左)

Profile:宮島 彩夏さん(右)/富山県出身、帯広畜産大学卒業後、JA士幌町に勤務し11年目。農産課で主に人参などを担当。得能 信さん(左)/帯広市出身、小樽商科大学卒業、入組1年目。大学ではラグビー部の部長を務めた。

2016年から本格的に栽培

J‌A士幌町では、それまで栽培していた品種の種子販売が終了することを契機に、ホクレン農業総合研究所が提案していた「カーソン」に注目しました。数年の試験栽培を経て収量が安定していたことから、2016年から本格的に生産者への導入を行いました。比較的スムーズに品種の切り替えができ、現在では12戸の生産者が23‌haに作付けし、10a当たりで約5.5トンを収穫しています。

主な作型は、5月下旬に播種、6月上旬から除草剤を数回散布、7月に2回の追肥、7月下旬から9月末まで予防防除を行います。9月下旬から10月上旬に抽苔(ちゅうだい)抜き取りを行い、10月10日の加工施設の受け入れ開始に合わせて収穫を開始します(図1)。

JA士幌町におけるカーソンの栽培カレンダー
図1.JA士幌町におけるカーソンの栽培カレンダー

抽苔の少なさと収量の安定性、収穫のしやすさが特長

カーソンの栽培では規格外を減らすために輪作による耕種的対策を基本としながら、「土壌検診の結果により春の殺センチュウ剤散布」および「生育盛期の黒葉枯病・軟腐病の予防防除」を徹底して行うことが必要です。

栽培している生産者からは、「以前の品種に比べて圧倒的に抽苔が少なく、作業がしやすいので助かる」と、高評価を得ています。

「実際、以前の品種は、抽苔する時期が生育後半から収穫間際まで長くばらつくので、生産者は抽苔株を抜き取る作業を複数回行っていましたが、カーソンは抽苔株が少ないためその作業が軽減できています。もちろん、その分のロスも減ります」と得能さん。また、発芽が良く、生長が晩生で、ゆっくりと大きくなるため夏の暑さに強い。太く、短い形状で収穫作業がしやすいので収量が安定しているといった特長があります。

収穫前の圃場の様子(9月)
写真1.収穫前の圃場の様子(9月)

生産者、加工施設、JAの連携で士幌モデルを確立

JA士幌町では、カーソンの収穫にキャロベスターではなく、ポテトハーベスターを用いています。これは、道内でも珍しい事例で、加工用人参を導入した時のJAの担当者が「お金をかけないで始められるように」と考えたもの。抽苔検査終了後に馬鈴しょと同じように茎葉をカットし、ポテトハーベスターで収穫しますが、カーソンは根長が短めなので、破損が少なくこの方法により適しています。

収穫した人参は、集荷の後、直接加工施設へ運ばれます。加工場では、洗浄後に生のままいくつかの規格にカット、加熱して急速冷凍し、冷凍カット野菜として販売されます(写真2)。

収穫後ダイスカット状態となっているカーソン(上)と加工した商品(下)
写真2.収穫後ダイスカット状態となっているカーソン(上)と加工した商品(下)

生産者の役割は出荷した段階で終了、加工施設で保管・貯蔵を行うため、手間がかからないのも利点の一つ。宮島さんは、「生産者、加工施設、J‌Aの三つが連携し、生産から加工・販売までを貫して行う士幌町に、カーソンがうまくハマった。これも、長年継続して生産者と最適な品種を模索し続けた成果です」と言います。

こうしてさまざまな工夫を重ね、生産者、加工施設、そしてJAの3者が体となり取り組んでいる「士幌モデル」は、これからカーソン導入を検討している地域にとっても参考になりそうです。

なお、カーソンは北海道立総合研究機構でも「北海道に適する加工用人参品種」として推奨されています。