北海道産小麦のネクストステージに向けて

日清製粉株式会社 北海道小麦センター
写真2.日清製粉株式会社 北海道小麦センター

国内で一定の需要をつかんだ道産小麦ですが、実需者の求める小麦づくりという次のステージを目指すことが必要です。

この記事は2021年8月1日に掲載された情報となります。

ホクレン 農産部 麦類課

日清製粉株式会社 取締役 業務本部長  横山 敏明さん

日清製粉株式会社
取締役 業務本部長
横山 敏明さん

北海道産小麦に何が求められているか

国内で消費される8割強は輸入小麦ですが、かつての道産小麦は品質面でやや劣り、輸入小麦と混ぜないと使用できない状況でした。しかし、加工適性に優れた品種の開発や生産技術の向上により、近年、2次加工メーカーの製品で「北海道産使用」の表示も目立つなど、道産小麦を主に使ったものが増えています。

農林水産省が策定する「食料・農業・農村基本計画」では、小麦の2030年度生産努力目標が108万トンに設定されるなど、国内産小麦の生産振興に向けた動きが加速しています。方、道産小麦が「無くてはならない存在」になったことで、年産ごとに生じる品質値や供給量のブレなどに対し改善を望む声が強くなっています(図1、2)。

きたほなみのタンパク値の推移
図1.きたほなみのタンパク値の推移 注)グラフの青線は品質加重平均値。また、赤線は各年度に分析したタンパク値の標準偏差(バラツキの大きさ)を示す。ホクレン扱い分よりサンプリングし、ホクレン食品検査分析センターで分析。
道産小麦入庫数量および販売予定数量との対比(ホクレン扱い)
図2.道産小麦入庫数量および販売予定数量との対比(ホクレン扱い)

そこで、国内の約7割、年間約60万トンの小麦を生産する主産地北海道として、今後の需要底上げを図るため取り組むべき課題や求められる役割について、製粉実需最大手、日清製粉株式会社 横山業務本部長にお話を伺いました。

品質や生産量のブレが少ない小麦を

「小麦は農産物ですが、我々製粉会社が販売する小麦粉には厳格な規格値が設定され、2次加工メーカーからは工業製品のような安定性が常に求められます。地域や年産で小麦の品質にバラツキがあった場合、そのまま加工して出荷するとクレームになってしまいます。そこで、複数産地のものを配合するなど、品質を定に保つ工夫をしています」

ただし、そうした努力でも補えない場合があると横山さんは言います。

「しかし、あまりにバラツキが大きい場合、安定した小麦粉の製造は非常に難しくなります。従ってブレが少ない小麦を当社は望んでいます。近年、北海道産小麦の品質向上は目覚ましく、消費者の国内産志向の高まりもあり、需要が増え、国内産や北海道産使用をうたった製品が増加していますが、多くは100%使用なので小麦の品質の影響も大きくなります。タンパクをはじめとした品質の安定はとても重要です」

加えて、更なる需要の底上げには生産の安定も大切だと話します。

「生産量についても、不足すると価格高騰で需要が減退し、その後の価格下落につながるなど、価格も不安定になり、また、供給不安から道産小麦を使った小麦粉の積極的な販売にも影響が出てしまいます。品種や産地の状況なども承知していますが、品質と生産量の安定が需給や価格の安定につながると思います」

実需者と共に北海道産小麦の振興へ

最後に、北海道産小麦へ期待することを話してくれました。

「当社には函館工場があり、2010年には北見市に北海道小麦センター(写真2)を設立するなど、長年、産地の皆さんと緒に道産小麦の振興に取り組んできました。また、昨年11月にはJAグループと当社グループで業務提携を締結し、国内産小麦の更なる振興に力を入れています。北海道は小麦の大産地として、非常に重要なパートナーと考えています。引き続き、高品質で安定した小麦の生産に取り組んでいただけることを期待しています」

北海道の小麦には、実需者の求める小麦づくりという「ネクストステージ」に進む使命がある。そう感じさせる横山さんの言葉から、生産者と実需者が強いパートナーシップで相乗効果を生み出す将来像が見えてきました。

北海道産小麦を100%使った主な業務用製品
写真1.北海道産小麦を100%使った主な業務用製品

小麦栽培の基本をチェック!

秋播き小麦の播種作業が始まります。品質を落とさず、安定多収を実現するには倒伏させないことが大切。元北海道農産協会 技監の髙橋義雄さんが、小麦の栽培管理の基本を分かりやすく紹介しています。YouTube内の「ホクレンアグリポートチャンネル」をぜひご覧ください。

ホクレンアグリポートチャンネル 小麦の生育と栽培管理の基本
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