既存の収穫体系に同伴栽培をうまく組み入れ、草地から草地への転換も可能に。
この記事は2020年6月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 本所 畜産生産部
中標津支所 畜産生産課
JAけねべつTMRセンターアクシス(写真1)では、麦類を牧草と同時に播種する「同伴栽培」に加え、グリホサート系除草剤の播種前処理をしっかり行うことで、より安定した牧草定着と自給飼料確保を実現しています。ほかの牧草地の収穫時期にも合致し、草地跡でも問題なく同伴栽培活用が可能となりました。同センターの取り組みを紹介します。
どうしても侵入してしまう雑草と収穫時期の課題
TMRセンターアクシスでは、2017年から草地更新の際に春播種で「同伴栽培」を行っています。これまでの夏播種からの変更で播種当年も収穫物が得られ、播種2年目の1番草収量も夏播種に比べ極めて多く、とても有用な技術と位置付けています。しかし、生育の早い麦類で雑草生育が抑えられるとはいえ、どうしても雑草が侵入してしまうのが大きな課題でした。
また、春播種による同伴栽培の収穫時期は8月上旬で、根室管内のチモシー1番草の収穫時期(6月下旬から7月上旬)と2番草収穫時期(8月下旬から9月中旬)の間になり、期間がまとまっていることが望まれる収穫作業の外部委託に負担となっていました。
播種時期が解決への糸口に
そこで同センターでは、麦類の収穫時期をチモシー2番草収穫期(9月中旬)に合わせることを考えました。そうすると、播種時期は麦の生育に必要な約70日間さかのぼった7月10日前後となり、薬剤を用いた播種前処理で雑草対策する期間を確保できるのです。しかし、従来の同伴栽培の播種時期より約40日遅くなることから、麦の収量や、牧草の越冬と翌年の1番草にどんな影響があるか懸念がありました。
そのため、2018年からこれに対する精密な試験を同センター内の圃場で実施。ホクレンも協力しJAけねべつとともに調査を行いました。そして、7月10日播種はもちろん、8月上旬までの播種であれば、越冬性や翌年の生育に影響がなく、同伴栽培が可能と確認されたのです。
収穫期と雑草の課題を解決する「一石二鳥の体系」を実規模圃場で実証
それを実証するため、草地前作区(永年草地跡)ととうもろこし前作区(とうもろこし作付け跡)の同伴栽培圃場を設け、播種前処理のみを行う同伴無し区と比較しました。除草剤散布と播種は、2019年7月10日に実施しました(表1)。
いずれの区も雑草の侵入は極めて少なく、きれいな圃場となりました(写真2)。麦の収量は生草で2000kg/10a程度で、同伴作物が無い場合に比べると、飼料の収量は生草で約5倍(乾物収量で約7〜8倍)にもなりました(表1)。
こうして、同伴栽培と播種前処理の組み合わせできれいな草地に仕上げられ、播種当年に多くの飼料を得られることが分かりました。また、シバムギなど多くの地下茎型雑草の侵入が想定される永年草地からの転換も可能と判断できたことから、今後の草地更新時には、より多くの圃場で同伴栽培を導入する予定です。