真空播種機を使用した播種法の検討(飼料用とうもろこし)

カテゴリー:実証試験
実施年度:2017~2019年度
実施:帯広支所営農支援室
対象JA:JA士幌町
協力関係機関:道総研 畜産試験場、十勝農業改良普及センター十勝北部支所、株式会社ビコンジャパン、三菱農機販売株式会社

POINT
●飼料用とうもろこしで真空播種機を使用し、狭畦(きょうけい)などの播種法による増収効果を検証

●小豆など他品目でも効果確認を実施中

この記事は2021年6月1日に掲載された情報となります。

真空播種機を活用した播種法の検討に着手

十勝管内の酪農家の飼養頭数は大型法人を中心に増加傾向で、自給飼料が不足することが多くなっています。そのうち、飼料用とうもろこしは、部の地域で耕畜連携などにより生産量が確保されていますが、更なる増産が求められています。方で、戸当たりの作付面積は増加しており、省力化できる作業機器の普及も重要です。

そこで、ホクレン帯広支所営農支援室では、高速かつ高精度で作業でき油圧で畦間の調整が可能な真空播種機に注目し、その使用により可能となる狭畦栽培や千鳥播種などの播種法が収量に与える影響を検証しました。

狭畦と千鳥播種の試験

2017年から2019年の3カ年に、JA士幌町や道総研畜産試験場、十勝農業改良普及センター、機械メーカーと連携し、真空播種機(写真1)を用いた播種法について、実規模に近いレベルの圃場で試験を行いました。2017年は、植え方(平行、千鳥)と畦幅(通常75㎝、狭畦45㎝)を組み合わせて実施(図1)。収量性などを評価しました(写真2)。

大型真空播種機「Multicorn DPⅡ」株式会社ビコンジャパン
写真1.大型真空播種機「Multicorn DPⅡ」株式会社ビコンジャパン 播種ユニットの油圧調整により畦間を45~80cmの間で1cm単位で変えられる。また、ISOBUSの活用により播種位置の高精度な制御が可能。現在は10台程度が十勝で普及。
各試験区の播種イメージ(栽植密度:全区8,400株/10a)
図1.各試験区の播種イメージ(栽植密度:全区8,400株/10a)
生育時の様子(2017年8月18日)
写真2. 生育時の様子(2017年8月18日)

2017年の結果では、乾物総重は、「平行×狭畦」区で慣行の「平行×通常」区対比103%、千鳥播種と狭畦を組み合わせた「千鳥×狭畦」区で同108%とやや高くなりました(栽植密度は全区8400株/10aに設定)。また、どちらの区も、乾物雌穂重は慣行と同等だったものの、乾物茎葉重は増加傾向でした(図2)。しかし、2019年は、2017年と比較すると増収効果は低い結果となったことから更なる検証が必要と考えられます(2018年は、天候不良のため試験を中止)。

収量調査結果 (2017年)
図2.収量調査結果 (2017年)
※棒上の数字は上から乾物総重、乾物茎葉重、乾物雌穂重の「平行×通常」(慣行)対比(%)
※栽植密度(設定値): 全区8,400株/10a

確立に向けた試験を2022年まで実施

これらの試験結果を踏まえ、より詳細な試験設計のもと播種法の効果を検証するための試験を今年新たに開始しました。2022年までの3カ年にかけて実施する予定で、畜産試験場などと連携して取り組むとともに、前述の不良要因も解明したいと考えています。

複数品目での総合的な検証へ

また、ホクレンではJAなどと連携し小豆や金時豆といった他品目でも同様の播種法に関する試験に取り組んでいます。生産者が実際に真空播種機を導入する際の効果を総合的に検証するのが狙いです。真空播種機の普及を通じ、収量向上や作付規模拡大の助になることを期待しています。