この記事は2025年6月6日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
近年、全道的に多発し、生産者を悩ませているテンサイ褐斑病。耐性菌の発生や使用制限など防除の難しさが課題となっていますが、新たな薬剤「フセキフロアブル」が登場しました。
テンサイ褐斑病の発生状況
テンサイ褐斑病は2021年までは比較的落ち着いた発生状況が続いていましたが、2022年以降は3年連続で全道的に多発生となり(表1)、防除対策が大きな課題となっています。

※発生状況 ◎:やや多い〜多い □:並 △やや少〜少
防除薬剤を巡る課題
登録のある薬剤は多数ありますが、耐性菌の発生が確認されています。そのため、主力として使用されてきたDMI剤※1、ならびにカスガマイシン剤は「可能な限り使用回数を低減する」、QoI剤※2は「本系統の薬剤は使用しない」と指導上の整理がされています。
現在安定して高い効果が見込まれるのはマンゼブ剤とその混合剤ですが、近年は褐斑病が多発し、防除回数を増やしても対応が難しい状況にありました。
※1 病原菌の細胞膜合成に関わる酵素の働きを阻害する作用がある殺菌剤の系統。
※2 ストロビルリン系殺菌剤の系統。
新規系統剤「フセキフロアブル」の特長
フセキフロアブルは、住友化学㈱によって開発された有効成分「ピリダクロメチル」を含有しています。浸達性、耐雨性があり、予防効果に優れています。
「ピリダクロメチル」は新規系統の成分として分類されており、従来の薬剤では効果のなかった耐性菌にも効果を発揮します。ただし、成分の特性では耐性菌の発生するリスクは「高い」と分類されることから、耐性菌の発生管理には十分に注意する必要があります(表2)。

※ピリダクロメチルを含む農薬の総使用回数:3回以内
※2025年3月4日時点での登録内容
フセキフロアブルの試験事例
❶公的試験事例(2016年)
公的試験(図1)では、対照のマンゼブ剤と比較して同等〜やや優る結果でした。2,000倍と3,000倍の比較では、2,000倍での使用がやや優る傾向でした。

❷施肥防除合理化圃場試験での現地試験事例(2024年)
昨年の施肥防除合理化圃場試験では、全道15カ所で試験を実施しました。
防除体系は本剤を前半で1回のみ使用し、2,000倍が4カ所、3,000倍が10カ所、2,000倍と3,000倍両方実施が1カ所でした。傾向として2,000倍と3,000倍では大きな差は生じず、いずれの倍率も実用性が認められました(表3)。

※実用性判定 A:高い B:ある C:やや低い ※結果から暫定的に判定を行った試験を含む
※1カ所で複数の防除体系について試験した事例もある ※いずれも現地圃場での使用による試験
これらの試験事例から、コスト面も考慮して3,000倍での使用で実用性はあると考えられます。
フセキフロアブルの効果的な使用方法
さまざまな薬剤系統で耐性菌が発生し拡大する中で、新規系統となる薬剤の開発には相当の時間がかかります。本剤についても耐性菌を発生させないよう、十分な注意を払う必要があります。
①体系前半での予防的な使用
②耐性管理のため1作期1回の使用
以上の2点に注意して、大切に使用していくことが重要です。
褐斑病の防除対策は予断を許さない状況にありますが、引き続き新たな情報をフィードバックできるよう取り組んでいきます。