
この記事は2025年6月4日に掲載された情報となります。
十勝農業試験場
豆類畑作グループ
主査 堀内 優貴さん
早生金時の中でも「大正金時」に代わる有望な新品種として、栽培面積が増えている「秋晴れ」。その特長や優位性、栽培のポイントについて紹介します。
栽培上のメリットが多い品種
近年、気候変動による降雨被害によって、「大正金時」の生産性が不安定になってきています。「秋晴れ」は、「大正金時」とほぼ同じ育成系統(準同質遺伝子系統)に、収量性の高い育成系統を掛け合わせて誕生しました。
最大の特長は、「大正金時」と同じ成熟期で収量が多いという点です。2021年〜2023年までの十勝地方における5か所の栽培試験では、「秋晴れ」の子実重収量が「大正金時」比108〜138%(3年平均)と多収でした。これは大変優位な点です。
草丈が従来品種の大正金時や福良金時よりやや短くなったことにより、栽培中に倒れにくくなっています(写真1・2)。さらに、従来品種の「福良金時」は茎折れしやすい性質がありましたが、秋晴れは茎折れ耐性も強いことがわかっています。

栽培試験では「大正金時」と比べ倒伏が少なく、葉落ちも良好でした。「収穫のしやすさ」が感じられるはずです。
また、「秋晴れ」はインゲンマメ黄化病抵抗性にも優れています。ただし、インゲンマメ炭そ病に対しては抵抗性を持たないレース※があるため、従来品種と同様の防除が必要です。
※炭そ病の病原菌の変異型
優れた外観品質と加工適性
さらに耐倒伏性により莢(さや)が地面に触れにくいため、色流れ粒の発生が少なく、製品歩留が高い点が優れています(表1)。

※試験⾯積は、各圃場:約10〜20a程度。
加えて、種皮の地色が僅かに濃いため、着色不良の発生が少なくなっています。
金時豆類は約6割が煮豆として加工されています。「秋晴れ」は煮崩れや皮切れが少なく、煮豆適性について高い評価を受けています(表2・写真3)。

※同じ産地の「⼤正⾦時」に対する相対評価。良:5〜 同等:3〜 不良:1

「⼤正⾦時」と同等以上の煮⾖適性が見られました。
「大正金時」は60年以上にわたって北海道を代表する金時品種でしたが、今後は「秋晴れ」がその地位を担うことを期待されています。
2022年産から採種圃が増加し、本格的な生産も始まっており、安心して作っていただきたい品種です。
豆は世界の食糧と農業を救う作物
ホクレン 農産部 雑穀課
特任技監 加藤 淳
金時豆が属するインゲンマメは、国内では北海道産が約95%を占めます。成分としては、100g中にタンパク質約22g、食物繊維約20g、ビタミンB10.64mgと多くの栄養素を含んでいるのが特徴です。
それに対し、脂質が約2.5gと非常に低く、栄養価が高い割に低カロリーな食品です。
金時豆の用途は煮豆が最も多く、その他加工用として製餡、菓子(甘納豆など)、製パンに使われているほか、小袋用として利用されています。
栄養価が高い豆をもっと食生活に取り入れるため、最近はサラダや煮込みなど甘くしない調理法も推奨されています。
栽培面では、マメ科の植物を栽培すると土壌に窒素が補充されることから、輪作体系に豆類を組み込むことで、窒素肥料を少なくすることができるため、導入する地域が増えています。
国連でも豆の栄養価値に着目し、2016年を国際マメ年に。人口増に対する持続可能な食糧生産などの観点から、豆類の生産・消費を振興するなど国際的に注目される作物となっています。

(ホクレン推計)
金時豆の最も多い用途は煮豆。赤色がおめでたい色として重宝され、北海道では約5割の家庭が赤飯に金時豆の甘納豆を使用しています。