この記事は2024年11月1日に掲載された情報となります。
全国に名高い伊勢名物「赤福」の餡には、全て北海道産小豆が使われています。老舗和菓子店と小豆生産者の間に結ばれた信頼の絆が、創業300年の変わらぬおいしさに結実されています。
株式会社赤福 (左から)
購買課 髙松 伸次課長
管理本部 総務部 総務課 奥田 真代さん
生産本部 長尾 康之副工場長
管理本部 総務部 総務課 石上 仁美主任
「ほまれの赤福」誕生
江戸中期の18世紀に大流行した三重県・伊勢神宮を参拝する「お伊勢参り」。全国から集う旅人たちの疲れを癒やしたのが、「お伊勢さん」のお膝元で誕生した赤福餅でした。
製造・販売元である株式会社赤福は、1707(宝永4)年に創業。看板商品である赤福餅の主な原材料は、砂糖、小豆、もち米の3種類。国産の原材料だけを使い、着色料や保存料などの添加物は一切加えない独自の製法を、300年にわたり守り抜いてきました。
その長い歩みの途中には、「大きな転換期もありました」と購買課の髙松課長は語ります。
「明治中期までは手に入りやすい黒砂糖を使っていたようですが、明治44年に昭憲皇太后様よりご用命を賜りました。その際に、当時は貴重品だった白砂糖に変えて献上したところ高く評価していただいた『ほまれの赤福』が、今も続く赤福餅のルーツになっています」
年間900tを使用
しっとりと美しく輝く餡は、赤福の味の要のようなもの。全て北海道産小豆が使われています。
「赤福がロングセラーになれたのは、“いつ食べても変わらない味”をお届けできているからだと認識しています。それを支えているのが北海道産小豆。当社の年間使用量は900t近く。これほどの量を安定的に供給していただけるのは、やはり広大な北海道だからこそ。加えて、色や風味に優れ、ムラが少ない粒揃い。この高品質と安定供給が可能な作付けを生産者の方々が維持してくださっているおかげで、私どもも安心して商品を作り続けることができます」と生産本部の長尾副工場長。北海道の生産者に絶大な信頼を寄せています。
ひとつの釜に1種類
餡づくりは、小豆を大釜で炊くところから始まります。長尾副工場長によると「ここで重要なのが煮熟(豆の煮え具合)です。豆の品種や生産地、収穫年によって豆の中身と皮が分離するタイミングが変わります」
豆ごとの煮熟性によって炊き上げる時間が変わるため、一度の餡づくりに使用する豆は1種類。同じ品種でも、産地や収穫年産が異なるものは混ぜません。「きたろまん」や「エリモショウズ」など、どの小豆でも赤福300年の「変わらぬ味」を表現する。餡職人たちの腕が冴え渡ります。
こうして炊き上がったに砂糖を混ぜて餡を作り、名寄産のもち米で作った餅と一緒に折箱に詰めると、赤福餅の完成です。
最後に髙松課長はこう語ります。「生産者の皆さんが作ってくださったものを余す所なく大切に使い、変わらぬ品質で商品をご提供し、お客さまにお喜びいただくことで当社の事業は成り立っています。立場は違っても、生産者の方々と当社は環境の変化や技術革新に対応しながら試行錯誤を続ける作り手同士だと思っています。皆さんの頑張りに励まされながら、今後も上質な道産小豆やもち米が届くのを心待ちにしています」