2022年 営農のポイント 畑作

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2022年のポイント!

1 【新技術】「春よ恋」の高品質多収栽培技術
2 【新技術】無代かき水稲栽培の後作で大豆が増収
3 てん菜は湿害から守るための環境づくりを
4 【新技術】マンゼブ水和剤を用いたテンサイ褐斑病防除法
5 馬鈴しょは土壌水分の管理と適切な培土が重要
6 【新技術】生食加工用で初! シロシストセンチュウ抵抗性品種

この記事は2022年4月1日に掲載された情報となります。

北海道農政部 生産振興局 技術普及課 総括普及指導員 片山 正寿さん

北海道農政部 生産振興局
技術普及課 総括普及指導員
片山 正寿さん

 

【麦類】

ポイント1【新技術】
「春よ恋」の高品質多収栽培技術

春播き小麦「春よ恋」に植物成長調整剤を1回散布して草丈を抑制。幼穂形成期に窒素3〜4kg/10aを追肥、または基肥を増肥することで、慣行栽培より増収が見込めることが明らかになりました(写真1)。窒素肥沃度区分や幼穂形成期および穂揃期の生育診断により、窒素増肥および追肥の要否を判断することで、倒伏を回避。増収および高タンパク化を両立できます(図1)。ぜひ参考にしてください。

 

高品質多収栽培技術で増収した「春よ恋」
写真1.高品質多収栽培技術で増収した「春よ恋」

 

基肥増肥・追肥時期別の増加効果(●幼形期追肥や基肥増肥→増収・高タンパク化 ●開花期葉面散布→タンパク上昇)
図1.基肥増肥・追肥時期別の増加効果
(●幼形期追肥や基肥増肥→増収・高タンパク化 ●開花期葉面散布→タンパク上昇)

 

「コムギなまぐさ黒穂病Q&A完結版」を発表

 

http://www.agri.hro.or.jp/boujosho/

 

コムギなまぐさ黒穂病Q&A第1版に新たな知見が追加された「コムギなまぐさ黒穂病Q&A 完結版」が完成しました。北海道病害虫防除所のHPに掲載されていますのでご覧ください。湛水処理によるコムギなまぐさ黒穂病菌の密度低減効果および発生圃場の麦稈を堆肥化する際に参考となる厚膜胞子の死滅温度も示されています。

 

【豆類】

ポイント2【新技術】
無代かき水稲栽培の後作で大豆が増収

水稲後作の大豆収量は、代かき移植の場合に比べて無代かき栽培(無代かき移植と乾田直播)で高くなることが、現地試験圃場で確認されました(写真2)。後作大豆の収量は土壌の有効水保持能に比例する傾向があり、無代かき栽培では土壌の粘土割合増加に伴う有効水保持能の低下が生じにくいことが理由に挙げられています。田畑輪換の計画づくりの参考にしてください。

 

代かき(左)と無代かき(右)の比較
写真2.代かき(左)と無代かき(右)の比較 写真提供:農研機構 北海道農業研究センター

 

【てん菜】

ポイント3
てん菜は湿害から守るための環境づくりを

てん菜は湿害に弱い作物です。保水性と排水性を備えた土づくりと共に、圃場内の溝切りなど停滞水を速やかに除去できる環境づくりが必要です。昨年は褐斑病の発生が少なかったものの、薬剤は耐性菌を考慮したもの、品種も褐斑病抵抗性「強」以上のものを選びましょう。また、直播栽培では適正な株数が確保できるよう、播種床の造成および播種機の調整に留意してください。

 

ポイント4【新技術】
マンゼブ水和剤を用いたテンサイ褐斑病防除法

テンサイ褐斑病に対して耐性菌が確認されたDMI剤等に替わり、耐性菌が発生していないマンゼブ水和剤を用いた効率的な防除法が示されました。抵抗性「強」の品種の場合、初発直後までに本剤400〜500倍を散布。その後は14日間隔で8月6半旬〜9月1半旬まで散布を継続すると高い防除効果が得られます(表1)。

なお、この対策は同等以上の効果を持つ別系統薬剤が登録されるまで、当面の対策とされていますので注意してください。

 

ポット試験によるマンセブ水和剤の接種前・接種後散布による効果の比較
表1.ポット試験によるマンセブ水和剤の接種前・接種後散布による効果の比較
※マンゼブ水和剤は400倍を供試。
※発病調査は初発の約7日後。

 

【馬鈴しょ】

ポイント5
馬鈴しょは土壌水分の管理と適切な培土が重要

馬齢しょは地上部の生育量に対して根量が少なく、水分ストレスを受けやすい作物です。有機物の継続的な投入による土づくり、明暗きょの整備や補助暗きょ施工による排水対策など、圃場の保水性や透排水性の向上に努めてください。

また、適切な培土も重要です。膨軟で断面の大きな培土はいもを肥大させ、地温の過度な上昇を防ぎ、褐色心腐など生理障害の発生軽減につながります。

 

ポイント6【新品種】
生食加工用で初! シロシストセンチュウ抵抗性品種

馬鈴しょ新品種候補「北海112号」は、生食加工用では国内初のジャガイモシロシストセンチュウ(Gp)抵抗性品種です(写真3・4)。抵抗性は「中」で、上いも重、規格内いも重ともに「さやか」並みです。発生地域の周辺で栽培すれば拡大の抑制につながります。

 

男爵いも-北海112号-さやか 草姿
写真3.男爵いも-北海112号-さやか 草姿 写真提供:農研機構 北海道農業研究センター

 

男爵いも-北海112号-さやか 塊茎
写真4.男爵いも-北海112号-さやか 塊茎 写真提供:農研機構 北海道農業研究センター