2024年 営農のポイント 畑作

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営農のポイント2024畑作

この記事は2024年4月1日に掲載された情報となります。

北海道農政部生産振興局 技術普及課主査(普及指導)(農業革新支援専門員) 木村篤さん

北海道農政部生産振興局 技術普及課
主査(普及指導) (農業革新支援専門員)
木村 篤さん

 

ポイント
❶麦類の安定生産には基本技術を徹底しよう
【新技術】赤さび病の多発傾向に対応した秋まき小麦の防除技術
❸豆類の安定生産は土づくりが鍵
❹小豆のマメノメイガ対策にノメイガ類登録の農薬を使う
❺てん菜・馬鈴しょの圃場は保水性・排水性を高く
❻てん菜の褐斑病対策
【新技術】「コナヒメ」の安定生産のための栽培法

※文中の[ ]内は商品名です。

 

麦類

ポイント❶
麦類の安定生産には基本技術を徹底しよう

昨年は麦類の収量・品質に地域間差、圃場差が大きく見られました。これは、高温乾燥により発生する赤さび病、土壌病害の発生や、土壌物理性不良による根張り不足等が影響したと思われます。

気象条件に関わらず安定生産するには、基本技術の徹底が求められます。適期適量播種や適正な窒素追肥による茎数・穂数管理、発生状況に応じた赤さび病防除、適正な輪作、有機物施用や心土破砕等を実施しましょう(写真1)。

写真1心土破砕
写真1.心土破砕

ポイント❷【新技術】
赤さび病の多発傾向に対応した秋まき小麦の防除技術

近年発生の多い赤さび病において、2回防除で赤かび病との同時防除が可能な防除体系を示しました。

写真2.赤さび病
写真2.赤さび病

過去の病害発生を踏まえながら圃場を観察し、初発を発見して早めに適正防除ができれば、影響を最小限に止められます。道央など例年赤さび病の発生が多い地域では、次葉展葉期〜止葉期にインピルフルキサム水和剤F[ミリオネアフロアブル]またはフルキサピロキサド水和剤F[イントレックスフロアブル](次次葉に病斑がない場合)を、開花始めに赤かび病にも有効なキャプタン・テブコナゾール水和剤[バラライカ水和剤]またはプロチオコナゾール水和剤F[プロラインフロアブル]を使用することで、効率的に防除できます(図1)。

図1.赤さび病の防除体系
図1.赤さび病の防除体系

 

豆類

ポイント❸
豆類の安定生産は土づくりが鍵

豆類は高温や秋の降雨の影響を強く受け、大豆・小豆の葉落ち不良、大豆のしわ粒や腐敗粒、雨害粒の発生、小豆の濃赤粒の発生が見られました。気象変動の影響を最小限に抑えるためには、有機物の継続的補給による土づくりが有効です。

有機物の施用により、土壌の膨軟化、気相率や保水性の改善につながり、乾燥ストレスの軽減が期待できます。地域で畜産農家から牛糞等が入手できる場合は活用し、その他は緑肥や地域の副産物を積極的に取り入れましょう(写真3・4)。

ポイント❹
小豆のマメノメイガ対策にノメイガ類登録の農薬を使う

昨年は道南を始め、全道各地の小豆圃場で突発的にマメノメイガ(写真5・6)の幼虫による食害が多発しました。本州から飛来したものと考えられ、北海道で越冬するのかなど、道内における生態についてはまだよく分かっていません。

当面は、適期に播種を行い、ノメイガ類に登録ある農薬を茎葉散布して防除してください。通常のアズキノメイガの防除時期に加え、開花始め及び9月以降の防除も有効と推測されます。

 

てん菜・馬鈴しょ

ポイント❺
てん菜・馬鈴しょの圃場は保水性・排水性を高く

てん菜は湿害に弱いため、保水性と排水性を高める土づくりが重要です。圃場の溝切りを行い、スムーズに停滞水を除去できるようにしておきましょう。

馬鈴しょも同様に水分ストレスを受けやすく、昨年は生育中盤までの少雨、8月からの多湿の影響を受けました。保水性の高い土づくりと、サブソイラなどを駆使して耕盤層を破砕し排水対策をすることが必要です。

ポイント❻
てん菜の褐斑病対策

昨年は高温・多湿により褐斑病(写真7)の初発が早まり、夏季を通して多発しました。そのため今年も㆒次伝染源が多く、注意が必要です。

写真7.てん菜の褐斑病
写真7.てん菜の褐斑病

連作を避けて可能な限り抵抗性の強い品種を導入すると共に、初発を発見したら即防除できるよう、圃場をよく観察しましょう。

複数の薬剤で耐性菌の発生が確認されているため、マンゼブ剤を基幹とした防除を実施してください。

ポイント❼【新技術】
でん粉原料用馬鈴しょ「コナヒメ安定生産のための栽培法 

「コナヒメ」は「コナフブキ」(写真8)と比べて茎葉が繁りやすいので、株間を2割広げた疎植栽培とします。

施肥方法は「コナフブキ」に準じることで安定的に生産できます。

指導参考では日照が少ない地域に適した「コナヒメ」の栽培法、施肥法が示されています。なお、これは十勝地域で得られた成果によるものなので、他地域では当てはまらないこともあります。

写真6.コナヒメ(左)とコナフブキ(右)
写真8.コナヒメ(左)とコナフブキ(右)