可変施肥を誰でも 使えるようにする

ICTを「使える技術」に する生産者同士での指導

キーワード:GPSICTRTKシステム可変施肥

ICTを「使える技術」に する生産者同士での指導

この記事は2024年4月1日に掲載された情報となります。

美幌町農業 ICT推進協議会会長平岡敏幸さん

美幌町農業 ICT推進協議会
会長 平岡 敏幸さん

スマート農業の先進地域で、可変施肥の導入に積極的に取り組んでいる美幌町。生産者自身が主体となって立ち上げた美幌町農業ICT推進協議会の平岡会長にお聞きしました。

 

POINT !

•生産者自身の声で、分かりやすく生産者に伝える。
•理解できた技術も時間が経つと忘れる。見直すための動画は必要。
•誰かがやってくれるはダメ。自分たちが動くこと。

 

「これからの農業」を見据え協議会を発足

美幌町農業ICT推進協議会発足のきっかけは、町内の先進的な生産者が農業先進国のICT技術を目の当たりにしたのが始まりでした。

「ICTの導入が進んでいない」と危機感を持ち、2013年にJAが協力し、衛星を利用したRTK基準局開設に向け協議を開始。

翌年、全道初のGMSS–RTK基準局を開設しました。その後もスマート農業の普及を進め、2019年に美幌町農業ICT推進協議会を設立。JAびほろ組合員の約半数の生産者が参加しました。

協議会ではICT技術を地域内に導入普及していくため、補助事業申請や導入効果の検証に加え、セミナー開催やオリジナルの操作動画作成と配信など、さまざまな活動を行っています。

可変施肥は育む技術

同協議会で現在注目しているのが可変施肥。減肥と収量の兼ね合いや多様な作物への利用、経営メリットなどを考慮して導入を進めています。

可変施肥では、トラクターのGPS機能を使った精密なエリア作成、NDVIによる施肥マップの作成を行いますが、基準施肥量は圃場の状況や収量目標に合わせて生産者自身が決めなければなりません。

単純に生育不良のところの施肥量を増やすのではなく、何年もデータを蓄積し、圃場に合わせたベストな施肥マップを作ることが重要です。高い効果を得るにはデータを蓄積する手間と時間がかかります。

「農業ICT技術の中でも可変施肥は、まだ誕生したばかりの技術。長い目で見るべきで、㆒朝㆒夕にできるような技術ではないと思います。しかし、今後、この技術で施肥量を削減できれば、肥料代だけでなく輸送コストの削減や、輸送時や肥料製造時に生ずる二酸化炭素削減にもつながり、環境への負荷も減らせる重要な技術です」と平岡会長は可変施肥に期待しています。

生産者が主体となって指導

 

写真1生産者が生産者を指導
写真1.生産者が生産者を指導。

 

同協議会では導入だけでなく「指導」に力を入れています。技術導入後は同協議会役員が主体となり指導(写真1)。その際に心がけているのが次の3点。

①横文字をなるべく使わず、短く誰にでも分かるように説明する。

②習熟度別に講習を行う。

③少人数で講習を行う。

生産者が生産者に教えることで「伝わりやすく、質問しやすい」と評判は上々。また、冬期間に座学で学んだことを復習できるように、オリジナル操作動画の制作と公開も行いました(写真2)。

 

写真2オリジナル動画13本を作成。いつでも学べるよう配慮しています
写真2.オリジナル動画13本を作成。いつでも学べるよう配慮しています。

 

施肥マップづくりやブロキャスへの取り込み方法など13本の動画をYouTubeで公開(限定公開)、活用されています。

「補助事業で導入した機械は血税を使ったもの。決して無駄にはせずに使いこなすのは当然です。“使えない人たちをなくしていこう”を会の目的としたのもそのためです」

誰もが技術を使いこなすため

同協議会では、大規模な講習会を年に複数回開催。講習会終了後のアンケートで疑問や質問を集め、次回のセミナーへフィードバックしています(写真3)。

 

写真3講習会も生産者の言葉で行い分かりやすい内容に
写真3.講習会も生産者の言葉で行い、分かりやすい内容に。

 

ほかにも、オリジナルの作業日報作成システムのソフトの配布、動画や教材などは2次元コードを配布して情報共有、「IoT&プログラミングセミナー」「Excelセミナー」などさまざまな活動を実施。講習会では、生産者自身が将来を見据えて機器の導入を図れるように新技術との向き合い方も伝えています。

「技術のメリット・デメリットを知り、機械をどう生かすかは使い手次第です。10年後に、技術の導入が遅れて〝しまった!〟となってはいけません。機械に使われるのではなく使いこなすためにも、協議会の活動を活性化していきたいですね」