JA士幌町では、小麦収穫のコンバイン、輸送トラック、受け入れ施設の三者で利用できるシステムを開発。伝票の記入や入力のミスがなくなり、作業が大幅に簡素化されました。
この記事は2021年10月1日に掲載された情報となります。
システム導入で解決できる課題がまだまだある
JA士幌町 農産部 次長
仲野 貴之さん
小麦の収穫・搬入のミスを防止
15年ほど前に株式会社日立ソリューションズのGeoMation農業支援アプリケーションを導入したJA士幌町。小麦の成熟度を衛星画像で解析して収穫の順番を決めるなど、早くからICTの活用に積極的に取り組んできました。
これをベースにして新たに開発したのが「小麦収穫支援システム」です。小麦の収穫は生産組合ごとに共同所有のコンバインで収穫し、トラックでJAの受け入れ施設に搬入していますが、その際に手書きの伝票を発行する手間がかかり、記入・入力ミスも多いという課題を解決するために考案されました。
システムの開発に携わったJA士幌町の仲野貴之さんは、経緯をこう話します。
「コンバインのオペレーターの記入ミス、受け入れ施設で集計する際の入力ミスなどで、正確な出荷量が分からなくなると、生産者の金銭的被害にもつながってしまいます。こうしたリスクを低減し、なんとか簡素化できないかと考えました」
ペーパーレスで手書き不要
コンバインのオペレーターには情報端末に専用アプリを入れてもらい、収穫した圃場を画面上で確認できるようにします。画面をタップすると事前に登録された生産者や品種などの情報が表示されるので、トラックのドライバーはNFC(近距離無線通信技術)チップの入ったカードをその情報端末にかざして、圃場の情報をカードに書き込みます。収穫した小麦を受け入れ施設に搬入する際は、そのカードをカードリーダーにかざすだけ。圃場の情報や収穫の日時を自動的に読み取り、控え伝票を生産組合に返却する仕組みです。
「ペーパーレスになって作業がかなり簡略化でき、ミスもなくなりました。オペレーターも精神的にラクになったはず。もう元には戻れませんよ」と仲野さん。これをステップに、他の作物の収穫にも応用したいと考えています。
「馬鈴しょやてん菜は小麦と違って重量があるので、輸送を専門業者に頼むケースが大半です。電話やファックスで輸送を依頼していますが、収穫物の保管場所もはっきりしないし、間違いも多いのが現状。このほかにも農業にはシステムの導入で解決できる課題がまだまだあると感じています」
将来を見据え、独自にシステム開発を手掛けたJA士幌町。担当者の仲野さんは、便利なシステムが全道で利用できるようになってほしいと願っています。
→ここが変わった!
収穫作業状況を把握できる
士幌町内でJAに小麦を出荷しているのは226戸、作付面積は2,239ha。その膨大な作業情報もGeoMation農業支援アプリケーションで、地図上に情報端末の位置を表示させ、作業場所や収穫面積をリアルタイムに把握できます。
→ここが変わった!
かざすだけでミスがない
トラックのドライバーが持つカードには交通系カードに使われているNFCチップを内蔵。受け入れ施設のカードリーダーにかざすだけで、収穫した場所、日時、小麦の品種などの情報を読み取らせます。手続きが自動化されミスを抑えます。
小麦収穫支援システムの概要
専用アプリを入れた端末をコンバインに搭載することで現在位置を地図に表示。(写真1)
アプリから集められた情報は電話回線を通じてJAに集められ、現在の作業状況と収穫面積を把握します。
トラックのドライバーは積み込み時にNFCチップ内蔵カードに端末から圃場情報や刈り取り管理情報を書き込みます。(写真2、3)
乾燥・調製施設ではNFCチップ内蔵カードをカードリーダーに読み込ませるだけで手続きが完了し、施設で受け入れます。(写真4)