この記事は2019年4月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 訓子府実証農場 農産技術課
係長 出原 慧
POINT!
❶トラクター搭載型センサ、衛星、ドローンを活用した可変施肥の特徴をまとめました。
❷可変施肥によって生育のばらつきが改善されました。
可変施肥に欠かせないリモートセンシング技術
可変施肥とは、作物の生育に合わせて施肥する量を細かく変えることで、生育や収量のばらつきを少なくする施肥方法です。これにはセンサやカメラで対象物の状態を調べるリモートセンシング(以下、リモセン)の技術が使われています。
そして可変施肥には、トラクターに搭載した生育センサで作物を観測しながら施肥作業する「センサベース可変施肥」と、衛星やドローンで得られた画像から作られた施肥(量)マップに基づき作業する「マップベース可変施肥」があります。
いろいろな可変施肥体系を比較
可変施肥は生育の均一化が図れることから、秋播き小麦の追肥作業を中心に徐々に普及しています。そこでホクレン訓子府実証農場で、これら可変施肥体系についてまとめて調査しました。
調査は平成30年産秋播き小麦「きたほなみ」圃場に、トラクター搭載型レーザー式生育センサ、衛星、ドローンを活用した可変施肥区を設置し、慣行の定量施肥区に対する収量への効果、機器の導入コスト、使いやすさなどを比較しました(図1)。
なお、可変施肥は幼穂形成期と止葉期で行い、基準となる施肥量や上下限値は各区とも同様としました(表1)。
収量のばらつきが小さくなる
各区を生育の良いところ、平均的なところ、悪いところに分け、それぞれから小麦を収穫し調査しました。その結果、可変施肥区は、生育の悪かった場所の改善が見られるなど、慣行区より収量のばらつきが小さくなり、どれも生育が均一になりました(表2、図2)。なお、慣行区との地力差などから増収効果については確認できませんでした。
それぞれの可変施肥体系の特徴(表3)
①トラクター搭載型レーザー式生育センサ
生育センサの導入コストがかかりますが、圃場を走行して平均生育値を出した後は、生育状況を観測しながら同時に可変施肥を行うことができます。また、夜間も使用可能なので作業時間の選択肢も広いです。
②衛星
雲がかかるなど、天候によってはリアルタイムの衛星画像の入手が難しいことがあります。しかし、画像配信サービスがあり、低コストで作業も容易です。施肥までの準備時間は最も短いです。
③ドローン
機体などの導入コストや操縦技術、画像処理の時間が必要です。しかし、ドローンは画像の解像度が高いので、病害センシングなど他の用途への活用も期待されます。
今後は畑輪作で継続して効果を確認
平成31年度は、後作の直播てん菜で可変施肥の効果を確認するなど、今後、畑輪作での可変施肥効果について調査を続けていく予定です。