この記事は2016年10月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 農業総合研究所 営農支援推進課
近年、大雨や長雨などが頻発し、圃場の透排水性向上は重要な課題となっています。基盤整備工事による対策が望まれますが、時間や費用的に難しいこともあります。個々でできる対策も大切です。
POINT!
透排水性改善には、溝切りや心土破砕、日常の圃場管理など、個々でできる対策も大切です。
1.圃場の状態をしっかり把握しましょう
効率良く改善するには、圃場の状態を的確に把握することが大切です。ポイントは融雪期や大雨直後の表面滞水の発生状況、耕盤層の有無、下層土の排水性の確認です。
2.圃場表面に頻繁に水がたまる場合には
表面滞水には、圃場の周囲や水がたまりやすい場所に溝を掘る「圃場内作溝(さくみぞ)明きょ」(溝切り)が効果的です。
この効果を十分に得るには溝を本明きょにつなぐなど、集めた水を圃場外に排出する工夫が大切です。また、粗粒火山灰による小規模な客土もあります。
近年はレーザー均平機で圃場に緩傾斜をつける「傾斜均平化」が普及してきています。凹地の解消とともに1/500〜1/1000程度の緩い傾斜で表面排水が促され、滞水の解消に効果があります。
3.耕盤層が形成されている場合には
「耕盤層」は、トラクターの走行や耕起、ロータリー耕などで作土直下(概ね20〜30㎝前後)にできる硬い土層です。作物根の生育や伸びが阻害され、養水分が十分吸収できなかったり、耕盤層の上に水がたまるなど透水性が低下します。対策として心土破砕などがあります。
(1)心土破砕の実施とポイント
「心土破砕」は、耕盤層をサブソイラなどナイフ状の爪で破砕し透水性を改善する方法です。プラソイラなど幅の広い爪で心土破砕にプラウの効果を加えた「広幅型心土破砕」、心土破砕の施工溝にモミガラなどを充填する「有材心破」などがあります。
①できるだけ乾いた条件でかける(亀裂が入ることで効果が上がる)。
②なるべくゆっくりかける(目標は歩く速度以下)。
③暗きょ排水と交わる(クロスさせる)ように間隔を狭くかける。
④暗きょが施工されているか下層土の透排水性が良いことが望まれる。
などのポイントがあります。また、効果は短期的なので状況によっては毎年の施工が必要となります。
(2)穿孔暗きょ施工機「カットドレーン」
近年、専用の機械で土壌中に空洞(排水孔)を形成する無材暗きょの工法を農家のトラクターでも作業できる施工機「カットドレーン」が開発されています。
土を四角形のブロックに切って動かし約70㎝までの深さに10〜15㎝の空洞をつくることができ、重粘土や泥炭土に適しています。また、今年度からJAいわみざわにおいて、ホクレン農機レンタル事業でカットドレーンをレンタルしており、今後各地の要望等によってさらに拡大する予定です。
なお、排水管を用いないので施工時の空洞の成形性や空洞内の流水による崩落など、耐久性を考慮する必要があり、埋木や石れきのある土壌や粗粒質の土壌など、作業に適さない土壌・圃場があります。
4.圃場管理の方法を見直しましょう
以上のような対策に加え日常の圃場管理も重要です。例えば反転プラウ耕ですが、これも圃場が乾いている時期の作業が基本で、特に水分過多な状況における無理な作業は練り返しや踏圧を助長し、透排水性などを著しく悪化させる場合があります。
作業機械が大型化し土壌水分が高い条件でも作業が可能となっていますが、場合によっては秋施工を見送り春施工を検討することも必要です。