畑作生産者Aさんのお悩み
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圃場内での生育ムラにより、収量や品質が安定しません。何か打開策はないですか?
可変施肥で生産性向上!
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先生!同じ圃場の中でも生育のバラつきが大きく、困ってるんです。どうしたらいいでしょうか?
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地力のバラつきが一因かもしれませんね。地力のバラつきは作物の生育に影響し、収量や品質が不均一になりますからね。
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地力のバラつきを改善するには、生育が悪い場所に合わせて圃場全体の施肥量を増やすべきでしょうか?最近は肥料代も上がっているので悩ましいのですが…。
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収量の向上や品質安定化、肥料コスト削減が期待される「可変施肥」が注目を集めています。北海道内でも様々な実証試験が行われていますよ。
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「可変」って変更できるという意味ですか?
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そうそう!圃場の肥沃度ムラを作物の生育状況から推測して施肥量を自動で変える技術が可変施肥技術。肥沃度ムラが少ない圃場には必要ないかもしれませんが、普段からムラが大きい圃場では、「収量や品質の安定化」と「施肥の適正化による肥料コストの削減」が期待される技術です。
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圃場の状態に応じて施肥量を変えれば過不足なく施肥が行えそうですね。
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前作の生育状況を人工衛星やドローン、生育センサーなどで読み取り、そこから地力ムラを推定することで、どの場所でどのくらい肥料が必要かをデータにした施肥マップを作成。この施肥マップに基づいた施肥を行うことで過剰な施肥を抑え、品質や収量の安定化が期待できます。農業試験場で行った実証試験では、小麦、てん菜、馬鈴しょで収量向上につながりました(表1、2)。
表1.秋播き小麦に対する可変追肥の効果(地独)北海道立総合研究機構提供
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秋播き小麦の圃場で追肥を定量施肥する区と、可変施肥する区を設けた実証試験の結果、全ての事例で可変施肥区の収量が多い結果となりました。
表2.てん菜、馬鈴しょに対する可変施肥の効果(地独)北海道立総合研究機構提供
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てん菜で平均 5.9%増収になり、5〜6千円/10aの収益増に。馬鈴しょは平均3.2%増収になり、3千円/10aの収益増となりました。
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今はどんな場面で使われているのですか?
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主に秋播き小麦の追肥で使われています。生育ムラや倒伏の軽減が期待できますよ!
図1.可変施肥の流れ
STEP1 センシング
ドローンや衛星で圃場の様子を撮影。人間の目には見えない赤外線などの波長も読み取ります。圃場の生育状況のバラつきを把握します(※ドローンや衛星を使わずに車載センサーにより圃場データを収集する方法もあります)。
STEP2 解析作業
ドローンや衛星が撮影した画像を解析し、土壌肥沃度のバラつき、土壌水分の状況、作物の生育状況などをデータにしていきます。広範囲かつ目視では分からない状況まで把握することができます。
STEP3 可変施肥MAP作成
コンピュータにより解析されたデータを元に基盤の目のような可変施肥マップをパソコンで作成します。
STEP4 可変施肥実施
可変施肥マップをガイダンスに取り込み、可変施肥に対応する施肥機によって、各地点の状況に応じて自動で施肥します。
STEP5 肥料最適化・生育の均一化
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可変施肥には、ドローンや人工衛星からの画像を解析するためのコンピュータとソフトウエア(※一部外注できるサービスあり)、ガイダンス、可変施肥対応の施肥機などが必要となります。