畑作生産者Aさんのお悩み
-
土壌環境を改善することが大切なのは分かったけど、具体的に何から始めるといいの?
耕盤層が引き起こす問題を解消しよう
-
圃場の水はけが年々悪くなっているような気がするんですが、問題点はどんなところでしょう?
-
いくつか理由は考えられますが、耕盤層が原因の一つかもしれませんね。
-
耕盤層ですか。圃場の土が硬くなることですよね。しっかり耕しているので大丈夫だと思います!
-
トラクターで耕うん作業をすると、機械の重さによる加圧や反転耕起の影響などで土壌中に硬い層ができます。これが耕盤層。機械で耕うんを何度も行えば、必然的に硬い耕盤が形成されることになります。
-
何度も耕うんすることで、表面的には柔らかくても、下の土壌が押し固められ、硬くなります。
-
耕盤層ができる理由は分かりましたけど、具体的にどんな点が問題なんでしょう?
-
耕盤層ができるとその下には作物の根は伸びづらくなります。その結果、作物生育に必要な養分や水分を、十分に吸収することができなくなります。また、耕盤層の上に水が溜まりやすくなるので根に悪影響を与えることもあります。耕盤層を破砕し、根が伸びやすい環境を整えることで、作物は十分な養分・水分を吸収できるようになります。
-
根が伸びづらくなるので、養分や水分を十分吸収できません。
-
耕盤層の上に水が溜まることで根を腐らせます。
-
耕盤層を破砕することで根が伸び、養分や水分を吸収しやすくなります。
カットブレーカーによる透排水性の改善
-
圃場の改善対策にはどんな方法がありますか?
-
暗きょや心土破砕などの従来の基盤整備に加え、今注目されているのが、生産者自身で実施できる全層心土破砕機「カットブレーカー」です。トラクターなどに装着されたカットブレーカーは、60cm ほどの深度まで挿入され、耕盤層を含む土を V 字状の切断刃で切断。その土を持ち上げて破砕・落下させ V 字状の破砕溝を形成します。
-
この透排水性や通気性が改善された破砕溝によって、土壌環境を良好にし、根の成⻑促進や根域拡大などを図ります。切断された土がそのまま落下するので、下層土が持ち上がりにくい特徴があります。
緑肥による物理性改善
-
緑肥も有効です。緑肥をすき込むと、作土にたくさんの有機物が供給されます。有機物が増えると土壌中に団粒が形成され、作土が柔らかくなり、作土の保水性や透水性が良好になるなど土壌の物理性が改良されます。
図1.エンバク作付けで耕盤を改良した区と緑肥無作付区で栽培したコマツナ圃場の土壌硬度とコマツナ根の分布(収穫時)
-
エンバクなどの緑肥の根は量が多く、深くまで伸びます。エンバクを栽培すると、耕盤層の緻密度が低くなっていました。次にコマツナを栽培すると、緑肥無作付区では、耕盤層よりも下にあまり根が伸びなかったのに対し、耕盤層が柔らかくなったエンバク作付後には、コマツナの根が耕盤層を超えて深くまで伸びていました。広範囲から養水分を吸収できるようになったと考えられます。
出典:「緑肥利用マニュアルー土づくりと減肥をめざしてー(農研機構)」
詳細は下記リンク先をご覧ください。