生産性向上<畑作>

地力を最大限活用して生産性向上!〜土壌pHを矯正しましょう〜

キーワード:土壌pH水素イオン濃度石灰質肥料苦土タンカル入り複合肥料酸性・アルカリ性

畑作生産者Aさんのお悩み

  • 「土壌が酸性化すると良くない」という話を耳にするのですが、具体的にはどんな良くないことがあるのですか?

土壌pHを知るところから始めよう

 

  • 土壌分析をしたらpHが低いと言われました。どうしたらいいですか?

  • 何もしないで後回しにしていると、雨や施肥の影響で土壌pHはどんどん低くなっていくよ。

  • pHというとアルカリ性とか酸性とかいったものですよね。それくらいは知ってますよ〜。

  • そうです。pHは土壌分析の最も基本的な項目です。pHは土壌中の水素イオン濃度のことで、低いほど酸性が強く、高いほどアルカリ性が強くなります。酸性化することで土壌のいろいろな性質が変化します。

図1. 土壌pHと肥料要素の溶解・利用度(関東土壌専技会、1996年)
図1. 土壌pHと肥料要素の溶解・利用度(関東土壌専技会、1996年)
  • pHが5.5を下回ると窒素、リン酸などが溶け出す量が減少。一方で有害なアルミニウムイオンなどが増えて、作物にマイナスです。作物毎に適したpHがありますよ。

表1. 土壌pHの基準値(北海道施肥ガイド2020より)
表1. 土壌pHの基準値 (北海道施肥ガイド2020より)

※てん菜「そう根病」、馬鈴しょ「そうか病」の常発地では5.5

  • pH5.5〜6.5の間と考えると、ほとんどの作物に対応できそうですね。

土壌pH改良に向けた石灰質肥料の施用

 

  • 土壌pH矯正に使う石灰質肥料はどうやって選べばいいんですか?

  • 例えば、酸性土壌の改良に一般的に利用される炭酸カルシウム(タンカル)は、土壌pHをゆっくり矯正し、利便性の良い粒状品も販売されています。アルカリ分の高い生石灰や消石灰はタンカルよりも早く効きますが、種子や苗に触れると障害を起こす恐れがあるため、播種や定植より7~10日以上前に施用する必要があります。また、生石灰は水に濡れると発熱するため、取り扱いや保管に注意が必要です。

表2. 主な石灰質肥料の特長

表2. 主な石灰質肥料の特長

  • 石灰質肥料のアルカリ分は、酸性を矯正する力を示します。pHの値を確かめるには、土壌分析簡易分析キットも市販されています。

場面に応じたpH改良方法

 

  • 畑作では、高pH土壌で馬鈴しょのそうか病の発生を助長することが知られ、石灰質肥料の施用が控えられる傾向にあります。一方、てん菜は比較的高いpHを好むので、輪作体系でてん菜作付け時のみ一時的にpHを改良するには、石灰質肥料の作条施用や苦土タンカル入り複合肥料を使うのが有効です。
    施設園芸では、硝酸態窒素の蓄積でpHが低下している場合もあります。pHと合わせ土壌塩類濃度の目安であるEC(電気伝導度)を確認し、低pH・高ECの場合は石灰質肥料の施用より過剰な施肥を控える方が効果的なこともあります。