この記事は2023年8月1日に掲載された情報となります。
カテゴリー:実証試験
実施年度:2021年度~
実施:訓子府実証農場
協力関係機関:株式会社ピュアライン
POINT
●タイストール牛舎(つなぎ牛舎)用搾乳ロボット
タイストール牛舎用ロボットで搾乳作業の省力化
北海道の酪農飼養形態の約95% が家族経営、そのうちの60%程度がつなぎ飼いといわれています。タイストール(つなぎ)牛舎は、一頭一頭に目が行き届く一方、給餌や搾乳に労力を要することから、作業の省力化が求められており、タイストール用搾乳ロボットは、その解決策の一つとして注目されています。
そこで、ホクレン訓子府実証農場では、40頭飼育可能なタイストール牛舎にオホーツク管内初となる搾乳ロボットを2021年12月に導入。寒冷地における動作確認を経ながら、2022年2月から自動運転による搾乳を実施しました(写真1)。
搾乳工程と導入メリット
タイストール用の搾乳ロボットは、牛舎内に設置したレーンに沿って牛のところまで移動し、足に装着したタグで対象の牛を確認します。
次に、アームで牛をロボット内に引き寄せ、分房の洗浄後にユニットを装着、搾乳を開始します(写真2、3)。
乳が出なくなった分房からユニットが1本ずつ離脱するので、過搾乳の軽減につながることが期待されています。
また、搾乳ロボットの管理ソフトには、搾乳や牛群の個体情報管理のほか、分房ごとの乳質に関する警告機能もあります。生産者がパソコンやタブレット、スマートフォンなどでシステムの遠隔モニターをチェックしたり、搭載されているカメラで牛舎やロボットの操作状況も確認したりできます(写真4)。
これらを通じて、搾乳作業時間の削減に加え、更なる効果や付加価値の向上、作業の省力化につながるかなどの検証を行っています。
搾乳ロボット導入後の乳検データについて
ロボットによる搾乳開始後の乳検データについて、ロボット搾乳以外の牛と比較しました。ホクレン訓子府実証農場では「ロボット以外」と「ロボット群」ともに1日2回搾乳であり、乳量に大きな差は見られませんでした(図1)。
体細胞数(図2)についても同様に大きな差が見られなかったことから、ロボットによる「乳量低下」や「乳房炎罹患率の増加」のリスクは低いと考えられます。
今後もデータを集積し、泌乳成績の調査を継続します。
見えてきた課題と今後の取り進め
タイストール搾乳ロボットの導入当初の厳冬期には、洗浄ラインやディッピング液※の凍結など寒冷地特有のトラブルが発生したので、安定稼働に向けての対策を講じています。
※搾乳後に分房を消毒する液
また、導入には牛舎見直しの可能性もあります。タイストール搾乳ロボットの導入が搾乳作業省力化の効果に見合ったものであるかを示すため、検証を継続していきます。
視察研修会や技術研修も
ホクレン訓子府実証農場では、操作マニュアルの作成や、導入を検討されている生産者に向けた研修会を開催しています。
また、取り扱い業者と連携しメンテナンス技術を実践で伝える場としても活用していく予定です。