品種

飼料用トウモロコシ新品種「P8888」

この記事は2022年2月1日に掲載された情報となります。

ホクレン 畜産生産部 自給飼料課

POINT
●収量性に優れた飼料用トウモロコシ新品種「P8888」とパイオニア積算温度計算プログラムを紹介します。

近年は輸入飼料の高騰により、自給飼料の重要性が叫ばれ、道内の飼料用トウモロコシの栽培面積は15年前の3万6400haから約1.5倍の約5万7000haまで拡大し、今後更に増えていくと考えられます。ホクレンでは極早生(75日クラス)から晩生(110日クラス)までのラインナップを取り揃えています。今回は、道内で活用される場面の多い90日新品種「P8888」について紹介します。

飼料用トウモロコシ新品種「P8888」

飼料用トウモロコシ新品種「P8888」
写真1.飼料用トウモロコシ新品種「P8888」

90日新品種「P8888」

P8888は大柄な草姿で雌穂のサイズも非常に大きく、稔実性・揃い性に優れるのが特長で、既存の90日品種対比で1割程度多収です(図1)。

ホクレン試験地における3カ年平均乾物収量(千歳、訓子府、帯広、2019-2021年)
図1.ホクレン試験地における3カ年平均乾物収量(千歳、訓子府、帯広、2019-2021年)

収量性が飛躍的に向上した背景には、デント種同士の交雑(デント×デント)を採用したことが挙げられます。トウモロコシは子実中のデンプンの種類により分類され、飼料用トウモロコシにはデント種とフリント種およびこの二つの交雑種があります。北海道においては、耐冷性に優れる北方型フリントが積極的に利用されており、近年のホクレン早生品種は全てフリントとデントの交雑種でした。デント種は一般的に収量性に優れますが生育に温度を要するため、デント×デント品種は中晩生以降での利用にとどまっていました。育種の過程において、より多収な品種を求めてデント×デントの早生化が盛んに行われてきましたが、遺伝系統が限られていたこともあり、ホクレンが導入する品種では、環境が厳しい北海道に適する品種はこれまでありませんでした。

「P8888」はホクレン取り扱い90日品種で初めてのデント×デント品種です。デント種特有の多収で、子実の消化性がフリント種に比べて優れるという特長があり、かつ道内で安定的に栽培できる耐病性と耐倒伏性を有しています。

品種比較試験(公的試験)では多収であることが認められ、北海道農業研究センターで実施されたすす紋病特性検定で〝やや強〟の評価、その他の耐病性、耐倒伏性も良好であったことから、北海道農業の発展に寄与する有望な品種であると評価されています。

最適熟期帯推定に便利なツール

温暖化の影響により、道内で以前栽培していた熟期帯より晩生の品種を栽培できる場合が多くなってきました。地域における気候条件や栽培体系(期間)から、最適な熟期帯を推定するうえで便利なツール、パイオニア積算温度計算プログラムを紹介します。 

このプログラムは無料で使うことができ、地域を選択、播種および収穫予定日を入力することで、播種から収穫までに得られる単純積算温度が表示されます(平年値・年度指定いずれも表示可能)。この値から栽培可能な熟期帯の推定ができ、品種を選択する際の判断基準として用いることができます。

また、実際の播種日を入力して収穫予定日を入れると、収穫に適した積算温度に達するかが確認できます。この際は入力した日の前日までは実際の温度、当日から収穫予定日までは平年値で温度が積算されます。その他、現在の生育状況を過去と比較したり、熟期帯で比較したりと使い方はさまざまです。ぜひ、飼料用トウモロコシの栽培にお役立てください。

パイオニア積算温度計算プログラムの使用方法(パイオニアエコサイエンス株式会社提供)
図2.パイオニア積算温度計算プログラムの使用方法(パイオニアエコサイエンス株式会社提供) http://www.phj-pioneer.com