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出穂予測システムで計画的なチモシー1番草の収穫を!

この記事は2021年12月1日に掲載された情報となります。

道総研 農業研究本部 企画調整部 企画課 牧野 司

道総研 農業研究本部 企画調整部 企画課 牧野 司

Profile:帯広畜産大学大学院修士課程修了。2000年から2021年3月まで道総研・酪農試験場で主にリモートセンシング・GIS技術を活用した草地・飼料作物の生産性評価に関する研究に従事。2021年4月から現職。

POINT
●チモシーの出穂時期を予測し、降水予報と照らし合わせることで計画的な収穫を行うことができます。

酪農試験場では牧草生育の早遅を把握してもらうため、毎年6月に入ると根釧地域のチモシー1番草の出穂期を予測しWebサイト上で公開しています。今回、より精度が高いシステムに改良したので紹介します。

出穂状況の予測方法

チモシーは日長や温度が出穂・開花に大きな影響を与えることが分かっています。また、干ばつが続くと出穂が早まることが知られています。そこで萌芽日以降の日々の可照時間、干ばつ状態を考慮した平均気温で生育ステージを表す「生育モデル」を開発しました。早生および中生品種の出穂始での予測誤差は、それぞれ±4.1および±3.2日程度です(図1)。この生育モデルに日々の気象データを当てはめることで出穂状況を予測できます。

早生品種(左)と中生品種(右)の出穂予測モデルによる予測値と観測値の関係
図1. 早生品種(左)と中生品種(右)の出穂予測モデルによる予測値と観測値の関係

生育モデルに当てはめる気象データは「メッシュ農業気象データ」(農研機構)を用いています。この気象データは約1kmメッシュの日別データで、大きな特長の一つは「予報値」が出力できることです。この「予報値」を用いることで、より実際に近い予測ができます。

システム利用で収穫作業をより計画的に

今回開発したシステム(図2)はインターネットに接続されたパソコン上のエクセルで動作します。予測地点の緯度経度、草地全体でチモシーの萌芽が認められた日を入力すると、インターネットを経由しサーバーから気象データを取得、それを生育モデルに当てはめて出穂状況を予測します。予測は当年、平年はもちろん、過去にさかのぼることもできます。また、出穂状況と合わせて、予測を行った日以降9日先までの降水予報をグラフ表示します。出穂状況と降水予報を合わせることで、より実践的な作業計画策定の参考にできます。

開発した出穂予測システム
図2. 開発した出穂予測システム

なお、予測結果を生産者圃場で検証したところ、若干のズレがありました。そのため、圃場での出穂状況を確認するとともに、出穂時期が明らかな年(比較年)の予測値も表示させ、その結果の解釈も加え(図3)、TMRセンター等の大規模作業体系における牧草収穫計画策定、個別生産者の収穫開始時期決定の参考に活用してください。

出穂予測結果の解釈方法
図3.出穂予測結果の解釈方法

システムの配付と利用の留意点

システムは無料で配付しています。希望者は酪農試験場 飼料生産技術グループにご連絡ください。利用者はメッシュ農業気象データの利用登録を行い、I‌Dおよびパスワードを発行してもらう必要があります。利用者登録については農研機構Webサイトをご確認ください。

システム配布について

酪農試験場 飼料生産技術グループ
konsen-agri@hro.or.jp

利用登録について

農研機構 メッシュ農業気象データシステム
https://amu.rd.naro.go.jp/