この記事は2020年12月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 畜産生産部 生産技術課
POINT
❶今年度1番草は、繊維の消化性が低い可能性があります。
❷粗飼料分析の新たな分析項目、NDFD(繊維消化率)に着目しましょう。
今年度1番草の傾向
牧草の栄養成分は、草種やマメ科率、刈り取り時期、年度によっても大きく変わります。特に変化が大きいCP(粗タンパク質)やNDF(中性デタージェント繊維)は、粗飼料の分析項目として重要です。
今年度1番草(生草)の粗飼料分析結果の、刈り取り時期による推移を図1に示しています。刈り取り時期が遅くなるにつれ、CPやTDN(可消化養分総量)が低下し、NDFが増加しています。過去5カ年と比べると(表1)、CPは例年並みですが、TDNは低く、NDFは高めになっています。また、Ob(低消化性繊維)は直近5カ年の中では高く、繊維の消化性が低いことが予想されます。つまり、給与しても想定より食べられない、もしくは、乳量に反応しない可能性が考えられます。
使えるエネルギーは消化率でも変わる
なお、今年9月下旬の粗飼料分析結果からNDFD(繊維消化率)という項目が追加されました。
これは牛の第一胃内の微生物を使って繊維の消化率を調べたもので(図2、表2)、最近の研究により粗飼料分析で使われている近赤外分析によって推定できるようになりました。
「繊維をどれくらい消化できるか」は、牛が「どれくらいエネルギーとして使えるか」とも言い換えられます。繊維含量を示すNDFだけでなく、NDFの消化率も重要といわれており、消化率であるNDFDが高いなら、より食い込める、エネルギーになるといえます。「草に力がある」といった表現を聞きますが、これは繊維消化率が高いことを示しているのかもしれません。
NDFD(繊維消化率)に着目
給与する粗飼料のNDFDは重要な指標となります。同じNDFの値であっても、NDFDは1ポイント改善するごとに、一日当たり乾物摂取量0.18kg、乳量0.25kg(4%FCM補正乳量)増えるといわれています(大場1999)。個々の飼料によってばらつきがあり(表2)、例えばNDFDが10%違うと、乳量では2.5kgもの差になります。
NDFDは、一部の飼料設計プログラムにも使われるなど、飼料給与の組み合わせに活用できます。今後、分析結果の蓄積が必要ですが、年次変動など飼料の質を把握しやすくなり、刈り取り時期の見直しや草地更新の検討などへの活用も考えられます。
物理性も重要、実際に確認しましょう
そのほか粗飼料の物理性(主に長さ)は、反芻を促すなど牛の第一胃の機能を維持するために大切です。しかし、長いものが多すぎると牛が食べる時間が長くなり、乾物摂取量を高めることや休息時間の確保が難しくなります。より生産性を高めるためには物理性にも気を配る必要があります。
粗飼料分析結果と合わせて、長さや硬さ、カビや色、匂いなど、実際に給与する前に現物を確認しましょう。