飼料

粗飼料分析の活用③~ミネラル

牧草地へのスラリー散布
写真1. 牧草地へのスラリー散布
この記事は2020年6月1日に掲載された情報となります。

ホクレン 畜産生産部 生産技術課

POINT
❶乳牛に必要なミネラルの把握が大切です。
❷特にカリウムに着目しましょう。

牛に必要なミネラル

ミネラルは、骨や体液など、いろいろな組織にとって重要な構成成分です。細胞内外の浸透圧の調整や神経系や細胞内の情報伝達など、成長や生命維持に重要な働きをしています。中でも、牛にとって1日当たりの摂取量が多く、グラム単位で必要となる元素をマクロミネラルとよび、カルシウム(Ca)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、塩素(Cl)、イオウ(S)の7種類があります(表1)。そのほか、ミクロミネラルとよばれる亜鉛やセレンなどの微量なミネラルも牛には必要です。

マクロミネラルの主な働き
表1. マクロミネラルの主な働き

必要量は生育ステージや泌乳量で異なる

それぞれのミネラルは、牛の生育ステージや泌乳量によって必要な量が異なります。例えば育成期間中は骨の発達のためにカルシウムやリンが必要です。また、牛乳に移行する分を補うため、1日30㎏の泌乳量に対して約120gのカルシウムが必要となります。

なお、ミネラルの給与は少なすぎると欠乏症、逆に多すぎても中毒症状を起こす場合があります。そして、ミネラルの間には方のミネラルの多量給与が他のミネラルの吸収や作用を阻害する、拮抗作用を有する組み合わせもあるので注意が必要です。

ミネラルの把握に粗飼料分析活用を

ミネラルは飼料作物の種類や刈り取り番草、植生、施肥、糞尿の散布量などによっても含量が変わります。ミネラルの適正給与のためには、粗飼料分析を活用し粗飼料中のミネラルを把握することが重要です。

ホクレンの粗飼料分析では、マクロミネラルのうち一般分析では4成分(Ca・P・Mg・K)、選択分析では3成分(Na・Cl・S)の分析ができます。

それぞれ蛍光X線※1や分光光度計※2を用いて分析を行っています。

※1.蛍光X線法:光を当てて、その跳ね返りにより測定する方法
※2.分光光度法:光を当てて、その吸収度合いを測定する方法(ナトリウムほか)

粗飼料分析値のカリウム値に着目

カリウムの過剰摂取は、乳牛のカルシウムやマグネシウムの利用率を低下させ、低カルシウム血症やグラステタニー※3といった病気の発生要因となります。

過去3カ年の粗飼料分析の値から、カリウムは牧草サイレージで高い値となっています(表2)。

※3.マグネシウム不足の場合、けいれん(テタニー症状)が起こり、特に放牧期に発生しやすいことから、グラステタニーとも呼ばれています。牧草のMg含量が低く、窒素とカリウム含量が高く、当量比(K/(Ca+Mg))が高い場合(2.2以上の時)に発症しやすいといわれています。
粗飼料分析値のカリウムの値(ホクレン粗飼料分析値より)粗飼料乾物中(%)
表2. 粗飼料分析値のカリウムの値(ホクレン粗飼料分析値より) 粗飼料乾物中(%)

乾乳牛への給与時の注意点

乾乳後期牛にカリウム含量の高い粗飼料(3%以上)を給与すると、イオンバランス※4がくずれることがあります。カリウムは、糞尿を散布する時期が遅れたり、量が多すぎる場合に高くなりやすいため、収穫した圃場を把握できるよう記録しておき、粗飼料分析値などを参考に糞尿の散布量や施肥管理を見直すことも大切です(写真1)。

カリウムが高い粗飼料を乾乳後期に給与する際は、マグネシウムの給与や、硫酸カルシウムなどの陰イオンを含む飼料の給与も検討しましょう。

※4.イオンバランス(カチオン・アニオンバランス)または、DCADとよばれ、酸(カチオン 陽イオン)と塩基(アニオン 陰イオン)の平衡(バランス)をみています。特に乾乳期に給与する飼料の陽イオン(Na+やK+)の値が大きいと、Caの吸収が阻害され、低カルシウム血症などの要因となります。
DCAD(mEq/飼料㎏)=(Na++K+)−(Cl+S²