温風式子牛加温装置「ぽかぽかウォーマー」の開発と普及

温風式子牛加温装置「ぽかぽかウォーマー」の開発と普及

カテゴリー:実証試験
実施年度:2016年度
実施:釧路支所営農支援室
対象JA:釧路支所管内JA
協力関係機関:道内部品メーカー

POINT
●子牛の事故率低減で生乳生産基盤を確保

●釧路農協連と連携して導入コストを抑えた製品を開発

この記事は2020年12月1日に掲載された情報となります。
ぽかぽかウォーマー
※製品パンフレットより引用

子牛の事故率低減に重要な分娩直後の管理

乳牛資源の減少が生乳生産基盤の弱体化につながると懸念されており、子牛の事故率低減は大変重要な課題です。

その解決には分娩直後の管理が重要なポイントのつで、子牛の体を早く乾かし温めることが、低体温による死亡や虚弱牛を減らすことにつながります。

このような中、釧路管内の酪農家から、より導入コストを抑えた温風式子牛加温装置の開発要望があり、釧路農業協同組合連合会とホクレンが連携し、道内メーカーの協力を得て開発を進めてきました。

温風式子牛加温装置「ぽかぽかウォーマー」の開発

試験品は2016年11月に完成し、11月中旬から12月中旬にかけて、釧路農業協同組合連合会機械センターで試験品の性能について、低温環境下(擬似環境)と通常環境下で調査しました(写真1・2)。

試験品外観
写真1.試験品外観
試験品内側
写真2.試験品内側

設置場所や安定的な電源供給などの環境を整えながら試験したところ、低温環境下においても温度・湿度とも安定的な結果が得られました。

そこで、ホクレン訓子府実証農場で厳冬期の現地試験を実施。温度変化や子牛の状態を観察しました。その結果、分娩後の子牛の場合は、短時間では腹部以外を十分に温めることができず、長時間使用する必要があることや、子牛に付着している羊膜などを拭き取って使用するとより早く温められることが分かりました(写真3・4、図1)。

分娩直後で子牛の体が濡れている状態
写真3.分娩直後で子牛の体が濡れている状態
試験品内で子牛が横臥している状態
写真4.試験品内で子牛が横臥している状態
試験品における外気温と内部の温度変化(子牛の投入時、子牛の取り出し時)
図1.試験品における外気温と内部の温度変化(子牛の投入時、子牛の取り出し時)

これらの試験結果をもとに更に改良を重ね、当初の試験品と比べ保温効果が高い製品が完成。開発された製品は、「ぽかぽかウォーマー」として釧路管内のほか道内全域で販売されています(写真5)。

製品の特長は、本体上部に開閉式点検窓を設けて内側の子牛の状態が見えるようになっていること。また、本体は上下に分割できて掃除しやすくなっています。

市販品外観
写真5.市販品外観

ニーズに即して急速に普及

「ぽかぽかウォーマー」を冬期寒冷対策として使用している釧路管内の酪農家からは、「子牛の保温効果が優れている」「子牛事故率が減った」など高い評価を得ています。

2016年度の販売開始以来、2019年度までに全道で457台、うち釧路管内で216台が導入されました(図2)。

今後も引き続き、ユーザーの子牛事故率低減状況や改善要望を把握し、より良い製品の普及推進に努めていきます。

ぽかぽかウォーマーの導入実績(釧路管内、全道)
図2.ぽかぽかウォーマーの導入実績(釧路管内、全道) (ホクレン経理ベース)