酪農女性サミット2025 in 札幌

キーワード:女性女性農業者女性部研修会
写真1.生産者、関係者含め全国各地から約240名が参加。
写真1.生産者、関係者含め全国各地から約240名が参加。
この記事は2026年2月23日に掲載された情報となります。

 

株式会社マドリン代表取締役 酪農女性サミット2025 in 札幌 実行委員長 椛木 円佳さん(広尾町)

株式会社マドリン代表取締役
酪農女性サミット2025 in 札幌 実行委員長
椛木 円佳さん(広尾町)

 

Profile:広尾町の酪農家出身。帯広畜産大学別科、カナダの酪農実習を経て2007年に自身の牧場を設立。2017年に仲間と共に「酪農女性サミット」を開催、このたび実行委員長として「酪農女性サミット2025 in札幌」開催に携わる。

 

2017年に立ち上がり、今回6年ぶりに開催された「酪農女性サミット」。実行委員長の椛木円佳さんから、活動が始まった経緯や、酪農業界で女性が置かれている環境についてお聞きしました。

 

酪農女性の交流の場をつくる

—椛木さんが就農された当初は、女性にとって酪農業界はどのような環境でしたか?

私が牧場を立ち上げた当時、女性が酪農業を営むことへの理解が今より薄かったと思います。地域でも前例がなく、「女性に牧場経営は無理だ」と厳しい言葉をかけられることも多々ありました。

でもその㆒方で、ありがたかったのは町内にいる酪農家の女性たちの存在です。「何か言われても気にしないで」と慰めたり励ましたりしてくれて、たまには食事にも誘ってくれる。それでまた明日も頑張ろうと思えました。困った時に支えになるのはやっぱり「近くの仲間」だと実感しましたね。

 

—そこから、酪農業界の女性同士の交流が広がっていったのですね。

2012年に、同世代の女性獣医師や人工授精師、農業関係の企業の方など女性同士で集まって温泉に行こう!という話から、「SAKURA会」が始まりました。

職種が違ってもこのような会ではフラットに話ができ、楽しんでいるうちに、気付けばお互いに刺激をもらっているという楽しい会でした。

最初は仲間との集まりでしたが、別の地域の女性にまでどんどん輪が広がりました。そのうちに、ただ集まって温泉に泊まるだけでなくセミナーも開催するようになり、今も毎年続いています。

頑張る酪農女性が集まる会を

—酪農女性サミットは、どのようなきっかけで開催されたのでしょうか?

2016年に帯広で行われた酪農技術セミナーの中で、女性酪農家によるパネルディスカッションに登壇しました。

そこで自分の牧場のことや地域の取り組みについて話したら、参加者の女性から「こんなに頑張っている女性がいるなら、酪農女性だけのサミットを開いたらいい」と声を掛けてもらったんです。私も面白そうだと思い、挑戦することにしました。

まずはメンバーを集め、十勝、網走、別海、千歳と、道内の酪農主産地の女性たちが実行委員として加わり、話し合いを重ねて2017年に札幌市で第1回目となる「酪農女性サミット」が実現しました。

 

—第1回目から多くの酪農女性が参加されたそうですね。

定員100名のところ、140名以上が参加してくれました。「女性が学び、励まし合い、つながる場」がこれほど求められていたのかと、うれしく思います。

翌年は全農さんも支援してくださり、中標津町で開催し240名ほどが参加。3回目の2019年は340名、スタッフを含めると400名近い規模になりました。

会場の熱気は本当にすごくて、「初めて来て不安でした」という方でも自然に輪に入れます。あの空気感は、女性が多い場ならではの温かさだと感じています。

最初に「3年はやろう」と話していたので、2019年を区切りとしました。酪農家は基本的に休みがないため、家族や会社の理解を得て、宿泊を伴って来られる人は酪農女性の中でも㆒握りだと当時から感じていました。

そこで、サミットでの話を地元に持ち帰り、仲間に伝えて勉強会を開くなど、「プチサミット」を行っていこうと話していました。

 

—6年が経過し、再びサミットを開催することになった経緯は?

2019年のサミット後に、すぐコロナ禍に突入。プチサミットを開くことも難しく、酪農の情勢も厳しい時期が続きました。そんな中、2022年に別海町の有志がプチサミットを敢行し、「それなら十勝もやらなきゃ!」と2023年から続けています。

活動を重ねる中で、酪農女性サミットを㆒緒に立ち上げたメンバーとオンラインで雑談していたところ、「久々にサミットをやろうか」という流れになりました。

実行委員会のメンバーについても議論を重ねて、若手のメンバーに入ってもらうことに。各地域で活躍する4人と緒に新たにサミットを計画しました。

 

写真2.実行委員の皆さん(左から小林さん、伊藤さん、椛木さん、永谷さん、久富さん)
写真2.実行委員の皆さん(左から小林さん、伊藤さん、椛木さん、永谷さん、久富さん)

 

 

参加者が何か持ち帰れる会に

—今回のプログラムはどのようにして決められましたか?

実行委員で春から毎月のように話し合い、内容や登壇者を決めました。参加される方に何か少しでも今後のヒントを持ち帰ってもらいたいですし、送り出してくれる家族や会社の人に胸を張って「勉強してきたよ」と言える内容にしたいと考えました。

 

写真3.トークセッションや講演では参加者から多くの質問が出ました。
写真3.トークセッションや講演では参加者から多くの質問が出ました。

 

写真4.ワークショップも開催され、参加者はコミュニケーションを取りながら楽しく進めていました。
写真4.ワークショップも開催され、参加者はコミュニケーションを取りながら楽しく進めていました。

 

写真5.会場では生乳を使った製品の配布も行われました。
写真5.会場では生乳を使った製品の配布も行われました。

 

写真6.牛の雑貨や酪農資材、作業着の販売ブースも設けられ、多くの人で賑わいました。
写真6.牛の雑貨や酪農資材、作業着の販売ブースも設けられ、多くの人で賑わいました。

 

—今回のサミット準備の中で、特に大変だと感じている点はどこでしょうか?

㆒番難しいのは「農家さんへ確実に情報を届けること」です。チラシの配布は各地域のJAにご協力いただきましたが、全戸に回覧されて女性に届けられるかというと、難しい部分もあります。私が十勝で出演しているラジオ番組やSNSでも告知しました。

どの方法が㆒番届くのかはずっと模索しています。結局いちばん強いのは口コミで、「あの人が行くなら」「友だちに誘われたから」という言葉の力には勝てません。だから私自身も地道に声を掛けました。

 

酪農経営に関わる女性を増やす

—サミット開催前と今とでは、酪農女性が置かれた環境は変化したと感じますか?

最初のサミットの時から、「女性が勉強して知識を得て、経営にもっと関わることが大事だ」という思いでやってきました。

実際にどれくらい増えたかは分かりませんが、人のつながりは間違いなく増えました。参加した方がSNSで「またみんなで会いました」と投稿してくれるなど、新しいネットワークができているのを見ると、本当にうれしいです。

酪農業界の女性は職場でも少数派だとよく聞きますが、愚痴を言ってスッキリしたり、情報が得られることで自分の環境を変えるために動けたりと、仕事を続けていけるための力になれればと思っています。

女性は行動の早い人が多く、「これ良さそう」と思ったらすぐ調べて動きます。その力を生かし、聞いた情報を自分の仕事に落とし込んでみてほしいです。

サミットから現場に戻ると日常に引き戻されて、モチベーションが続かないのは当たり前です。

それを保ち続けるために、サミットで出会った人と連絡を取って「良かったよね」と話したり、SNSでつながって他の参加者の投稿を見たりするのも良いと思います。

 

—酪農家の読者へ伝えたいことはありますか?

酪農の経営に関わる女性が増えてほしいと思いますし、関わることで牧場や地域をもっと良くすることができると思います。そのためには、家族や男性の理解が深まる必要があります。

酪農家では、家を守るのが女性の仕事だと思われがちですが、外に出て勉強したり、人とつながったりすることを気軽にできるようになってほしいですね。

私は「女性酪農家」という区切りにも違和感があり、本当は性別に関係なく「酪農家」「経営者」と呼ばれる世界が当たり前になってほしいと思っています。

女性も男性も、酪農業界に人が増えてほしいと考えていますので、そのきっかけづくりはどのような形でもやっていきたいと思っています。今回のサミットが、参加した方の「次の㆒歩」につながるきっかけになればうれしいです。

 

「酪農女性サミット2025 in 札幌」のチラシ

●12/3(水)
基調講演:永岡 里菜(株式会社おてつたびCEO)
トークセッション
「酪農女性のモチベーションUP!講座〜わたしらしく酪農を続けるヒント〜」
●12/4(木)
講演:佐藤 麻耶(削蹄師/株式会社G’dayHoofCare)
ワークショップ
「“やりたい”と“やれるかも”をつなげるアイデアマップ」

 

「酪農女性サミット2025 in 札幌」、前回サミットの様子も配信中。>>こちらからご覧いただけます