
この記事は2026年1月6日に掲載された情報となります。
ホクレン 畜産生産部 自給飼料課
POINT
❶オーチャードグラスと比較して耐寒性特性は同程度、収量は同等以上、繊維含量が少なく水溶性炭水化物含量が多い。
❷オーチャードグラスと混播することにより、収量水準を下げずに飼料成分を改善できる。
地球温暖化の影響で、北海道の気温は上昇傾向にあります。近年では、少雨の影響も加わって夏季に牧草が弱る現象も多く見られます。
このように懸念される気象変動への対応策の㆒つとして、環境適応性の高いトールフェスク(以下TF)の活用が期待されます。
ホクレンは、独自に導入し北海道優良品種に認定されたTF「スワイ」の供給を開始したほか、TFの道内における採草利用の普及に向けて取り組んでいます。
道総研酪農試験場(以下酪農試)との共同研究では、TF「スワイ」の耐寒性特性と採草利用時の生産性の評価を行いましたので、ご紹介します※。
※トールフェスク「Swaj」(補遺)
−耐寒性特性評価と採草利用における生産性評価− (令和6年度北海道指導参考)

耐寒性特性の評価
温暖化の影響があるとはいえ、道内での利用を考えるうえでは、越冬性に関する特性の確認が必要です。
土壌凍結地帯に位置する酪農試(中標津町)において耐寒性特性として、耐寒性と耐病性(雪腐病)の評価を行いました。両耐性ともにメドウフェスクを『強』、オーチャードグラス(以下OG)を『中』、ペレニアルライグラス(以下PR)を『弱』として比較した結果、TF「スワイ」はOGと同程度の『中』と評価され、改めて土壌凍結地帯でも栽培が可能と認められました。
採草利用における生産性評価
道内においてTFに関する報告は放牧利用が多く、採草利用はほとんどありません。そこで本試験では、TF「スワイ」を採草利用した際の生産性を、土壌凍結地帯の酪農試とホクレン訓子府実証農場(以下 実証農場)で評価しました。
評価対象はTF「スワイ」単播と、「スワイ」と出穂期が比較的近いOGとの混播の2種類とし、OG単播と比較しました。1番草は出穂始から出穂期で収穫し、その後刈り取り間隔50日で年間3回収穫を行いました。
TF「スワイ」単播の年間合計乾物収量は、OGと比較して、酪農試では同等、実証農場では多収でした(図1、図2)。飼料成分含量は、OGよりNDF含量は低く、WSCは2・3番草で特に高かったことから(表1)、TFの採草利用による高品質自給飼料の生産が可能と考えられました。



CP:純タンパク質およびその他窒素化合物を含み、アミノ酸の供給源となる。
NDF:細胞壁を構成するセルロース、ヘミセルロース、リグニンが主成分で、牛に必須の成分ではあるが、 消化性は比較的低い。
WSC:単糖類および少糖類を含み、乳酸菌のエネルギー源となるため、良質サイレージが作りやすくなる。
OGと混播した際のTF被度(冠部被度・葉の広がりの度合い)はおおむね10−30%と、低水準ではあるものの消失したりOGを抑圧したりせず、一定程度の割合で推移しました。収量はOG単播と同等かやや多収で、飼料成分は各草種単播の間の値となりました。
一方、実証農場で参考区としたOGとPRの混播区では、被度で30−40%あったPRが、冬枯れにより3年目には数%まで激減しました。OGにより一定の収量は保てましたが、土壌凍結地帯におけるPRの利用はやはりリスクが伴います。
本研究成果の活用
TF「スワイ」の採草利用はOGと比較して同等以上に多収で、栄養価が高い(低NDF、高WSC)ことが分かりました。
使い慣れたOGにTFを混播することで、収量を維持しながら、飼料成分の向上(低NDF、高WSC)が期待できます。本試験にて、TF:OGの播種割合は重量で1:1としましたが、これを種子粒数に換算すると約1:2となるため、TFの生育量は少なめとなりました。TFの混播播種量については検討の余地があり、現在も実証農場にて試験を継続しています。