アジアを中心に広く輸出される北海道和牛

キーワード:北海道産和牛海外道産品

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この記事は2025年10月1日に掲載された情報となります。

畜産販売部-ビーフ課

ホクレン 畜産販売部
ビーフ課
調査役 夏伐 智彦(右)
課長補佐 鈴木 涼平(左)

 

細かなサシの入った霜降り肉は、黒毛和牛ならではの魅力です。海外でも知名度が高まり、高級食材として流通しています。ここでは北海道産の和牛はどのように海外で受け入れられているのか聞きました。

 

POINT

●アジアを中心にアメリカやEUへも輸出。

●輸出には国ごとに厳しい認定条件あり。

●輸出は再生産できる環境を守る手段の一つ。

 

北海道和牛を世界へ

—北海道の牛肉の現状は?

ホクレンの輸出先として最も多いのは台湾です。その他、アメリカ、EU、香港、シンガポール、UAE(アラブ首長国連邦)などがあり、直近では、ニュージーランド、フィリピン向けの認可も取得し取り組み始めています。

JA全農ミートフーズ(JA全農インターナショナル)やホクレン通商などを通じて輸出されており、2024年度の牛肉輸出向け数量は、黒毛和牛を中心に約314t。右肩上がりで増加しています(図1)。

 

図1北海道産牛肉の輸出量の推移
図1.北海道産牛肉の輸出量の推移(ホクレン取り扱い実績)
北海道産の牛肉の輸出は2013年度にシンガポールとタイからスタート。2015年度にベトナム、2016年度にUAE、2017年度に台湾・香港、2019年度にアメリカ、2021年度にEUと、徐々に拡大してきました。

 

しかし、輸出先では、他府県産の牛肉も流通しているため競合が激しく、輸出先国の需要数量を超えてきており、以前に比べて輸出向け数量の伸びが穏やかになってきているのが現状です。

再生産できる環境のために

—輸出ならではの難しさとは?

輸出国ごとにさまざまな輸入の認定条件があります。例えばUAEなどのイスラム圏では、宗教的な観点からと畜の手順が定められており、認証機関の承認が必要です。

E‌Uであれば動物福祉に則った取り扱いが求められ、生産に関する衛生管理証明書が求められます。

北海道畜産公社の工場は道内に5カ所ありますが(函館・早来・上川・十勝・北見)、E‌Uやアメリカなどの厳しい輸出条件に適合しているのは十勝の第三工場だけで、UAEは北見工場だけです。

—いま直面している課題は?

北海道和牛の認知度向上です。アジア圏では「北海道」というブランド力があり、北海道和牛の知名度もあるものの、アメリカやEUでは神戸牛や宮崎牛の知名度が高く、和牛産地としての「北海道」のPRが急務となっています(写真1)。

 

写真1海外でのPR
写真1.海外でのPR
生産から輸出まで一貫した体制を整備するため、国の畜産物輸出コンソーシアム推進事業の支援を受け、JA全農インターナショナルと連携して各国でプロモーションを実施しています。2024年度はスペインなどで北海道和牛をPRしました。

 

現状ではアジア圏の方々に和牛が好まれる傾向があります。

アメリカはステーキ文化のため、日本のすき焼きのようなスライス肉を食べる習慣がなく、今後、和牛の食文化を浸透させていくにあたり、和牛のおいしさを、料理のレシピも含めて提案していく必要がありそうです。

—難しい問題を克服してでも輸出に取り組む意義は何でしょう?

コロナ禍で国内のインバウンド需要が減少したことや景気低迷で、高級部位とされるロイン系(ロースとヒレ)の国内需要が落ち込んだこともあり、輸出することは、高級部位を販売する重要な販路の㆒つだと考えています。

また、生産者の皆さんが、安心して再生産できる環境を守っていくための、手段の㆒つとして捉えています。